冤罪者 (文春文庫)
騙されます。騙されるとわかっていながら、見事に。
正直、話は重く、結末に向かうにつれ悲しさも増します。
しかし!
前半の冗漫な導入とはうって変わって、
サスペンスと読むにつれて二転三転する叙述の罠。
悲劇なのに、喜劇。そんな感覚にとらわれます。
相変わらずレビューを書きにくい作家さんですが、
とにかく、折原作品の中ではベスト5に入れられる秀作です。
ULTRA SONIC
ミニアルバムだけど佳曲ぞろいで聴きごたえがあります。
カッコもコンセプトもありゃしねえいい曲でした。それだけ。
「秋の気配」はカバー曲ですが、元の曲と聴き比べてみてファンとしてのひいきナシに「これは名カバーだ」と思えました。
追悼者
意味ありげな幕間や、
インタビュー形式で、
ぐいぐいと謎に惹かれました。
二転三転してようやくたどりついた結末は、
意外とありそうな感じでしたね。
事実が二転三転していき、
最後の方は目が離せなかった。
でもオチは読めました。
それでも面白かったです。
倒錯の死角 (講談社文庫)
翻訳家の大沢は、屋根裏部屋から向かいのアパートの201号室を覗く趣味があった。
ある日、そこの住人の女が何者かに殺され、死体となっているのを目撃した大沢は、
ショックのあまり酒に逃げ、ついにはアルコール中毒になって入院する羽目に陥る。
彼の退院後、201号室に新しい入居者がやって来た。その女の挑発的な行動に
始終心をかき乱された大沢は、再び酒に逃げ、次第に精神の均衡を崩していく。
さらに、大沢に恨みを抱くコソ泥の曽根が、ひょんなことから201号室に
忍び込み、女の日記を盗み読んでしまう。そのことが思わぬ事態を生み……。
大沢の一人称の語り、201号室の女の日記、曽根を視点人物とした三人称の
叙述、という三つのパートが錯綜しながら展開されていく構成が採られた本作。
トリックのポイントとなるのは、「日記」というテキストの性質とその扱いです。
それにしても、主要人物のほぼ全員がろくでなしか性格破綻者という本作は、
たしかに切羽詰った狂気が描かれてはいるものの、一歩引いて眺めてみると、
コントにしか見えません。そういった意味では、大いに笑わせてもらいました。
帝王、死すべし
個人的には昨年の「追跡者」、一昨年の「逃亡者」よりも楽しめました。日記、学園、妄想という折原作品ならではの展開は健在です。ラストも人によって度合いは違うと思いますが、個人的には「なるほど」と腑には落ちました。唯一、もう少しと思ったのは、登場人物に圧倒的な変人が登場しなかったことでしょうか。そこが折原一作品の醍醐味であり、スリリングを加速させる部分でもあるので、若干大人しかったかなと思います。でも、その分物語が変に破綻することなく進むので、納得感は得られるでしょう。充実作だと思います。