我が家の問題
「家日和」に続き、家族を描いた6作品が収められたユーモア小説です。
帰宅拒否に陥った夫とマラソンにはまった妻を描く2作品は夫の視点から、仕事が出来ない夫とUFOが見えると言いだ出す夫を描く2作品は妻の視点から、両親の離婚を描いた作品は子供の視点から、実家への里帰りを描いた作品は夫婦の視点から、各作品の視点は異なりますが、最後が前向きな結末で終わっている点は一致しています。
個人的には、「家族っていいなぁ」と思わせてくれる「里帰り」と「妻とマラソン」、終わり方が爽快な「夫とUFO」がお奨めです。
くちぬい
放射能を恐れて、東京から夫婦が避難したのは、かねてから陶芸好きの夫が惚れ込んでいた高知の山村。
ところが、笑顔で迎えられ、いい人ばかりと思えた村人の態度は変わります。
そのきっかけは、村の習慣で建物を設置しない場所に、陶芸用の窯を作ったこと。
その後、様々な嫌がらせらしきものが始まりますが、村人の誰の仕業かわかりません。
もともとの村人以外、例えば、他から通ってきている役場の人や駐在所の人には、
村人の人間関係は明らかにされません。
そして、最後の最後にくちぬいの姿が明らかになります。
その姿とは.....
四国を舞台にして古くからの因習に結びついた話ですが、もっと因習の暗部を描いてほしかったというのが、
正直なところ。それに、放射能を逃れて移住するという設定がなくてもよかったのでは? というより、
無理に現在進行形の出来事に結びつけない方が、人の怖さが描けたのではないかと思います。
破軍の星 (集英社文庫)
16歳にして帝の子を戴きながら京から、陸奥へ。
その若さで一軍を指揮して、さらに陸奥を平定。
自分の大儀を探しながらも、朝廷軍として
鬼神のように働き足利軍を脅かして行く動きは
読んでいて感嘆してしまった。
違う道を選んでいたら、今の東北は違う存在だったんだろうか。。。
後半のスピード力のある文章に、結末を嫌がる自分がいつつも、
一気に読んでしまった。
顕家ももちろんだけれど、彼に従っている臣が本当に一途で
顕家に絶対の信頼というか自分の生を預けていて、
その想いに泣ける。
顕家のラストも泣ける。
漢だな...とうらやましくも思った。
(2009.9.26読)
図々しい奴 [DVD]
植木等、ハナ肇に続くクレージー・キャッツ第三の男・谷啓の主演作。
佐久間良子をヒロインに迎えた正統派人情喜劇である。
時代背景は第二次世界大戦前、孤児だった谷啓は岡山の華族の御曹司と
東京の老舗羊羹屋の娘に気に入られ立身出世してゆく。
だが戦況は厳しく……
谷啓さんは無責任男・植木等と、テレビでは全くつまらなかったハナ肇が、山田洋次の演出のもと
朴訥な馬鹿という特異なキャラクターを開発していることを気にしていただろう。
自分はどうすべきか。クレージー・キャッツで最も作家性が高かった谷啓さんは、
この映画でその作家性を封印した。瀬川昌治監督にすべてを預けたのである。
その結果できた喜劇とは……