ラスト・ワルツ 特別編 [DVD]
ザ・バンドのほうは安さにつられて「ついでに」買っただけなのだが、『タイガー・ランド』が4つ星だとすればこちらはその上をいく、すばらしいできばえだった。いったい誰がこの映像を撮ったのかと思えば、なんと監督はマーティン・スコーセッシだった。映像中にも髭面で登場する。どうりで・・・。
冒頭「この映画は大音響で見てくれ」というメッセージが出る。この指示には従った方がよい。ザ・バンドの演奏のすばらしさは当然として、ゲスト陣の豪華さにも目を疑う。ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル、マディー・ウォーターズ、エリック・クラプトン、ボブ・ディラン・・・。どういうコネクションなのか理解に苦しむが、ニール・ダイアモンドやヴァン・モリソンまで登場する。それがみんな、いかにも「友情出演です」という感じではなく、それぞれのライブとしても最高のパフォーマンスを披露する。ロック、フォーク、ヒルビリー、カントリー、ブルース、クラッシック、ジャズと音域も広いし、登場するゲストたちの「エスニック」的背景もユダヤ系、アイルランド系、アフロ・アメリカン、カナダ人、イギリス人と多彩だ。ザ・バンド音楽の懐の深さを感じさせる。中でもニール・ヤングの珍しく「明るい」表情と意外に「上手い」コーラスぶりには驚いた。ザ・バンドのメンバーと同じカナダ人同士だという連帯感を感じさせる。特典映像の音声解説も必聴。
ラストシーンでザ・バンド演じる可憐な「ワルツ」と、それに続く(なぜか)『グリーン・スリーブス』が流れると、ほとんどの40代50代のオヤジは思わず涙するのではないか。もちろん、登場するミュージシャンたちをはじめて見る(聴く)という若い人たちにもお薦めの一枚だ。
アストラル・ウィークス
ユニバーサルが、紙ジャケ+SHM-CDでヴァンの諸作品を再発しているが、触発されたか、ワーナ時代の3作品が「フォーエヴァー・ヤング」シリーズで登場。書き下ろしのライナー(Pバラカン!)に歌詞・対訳がついて、やはりこの価格は嬉しいね。
この作品はヴァンの長〜いキャリアの中でも、次作「Moondance」と並ぶ最重要アルバム。ゼム解散後、一人孤独と闘いながら歩み始めた独自の道を、アコースティック風の調べに乗せて紡がれる8編の短編小説、本当に素晴らしい。アコースティックとは言ったものの、当時流行のフォーク・ロックとは違う、ジャズ系のセッションミュージシャンが繰りなす即興性の高い演奏をバックに、ヴァンのソウルフルな歌声が縦横無尽に絡む様は、ロックのノリと一線を画す、不思議な高揚感が全体を包みこむ感じが、まさに圧巻だね。
ラスト・ワルツ(特別編) [DVD]
公開当時は劇場で観てコンサートがフルで写っていなくてスタジオでのセッションやインタビュー(あまり為にならない)が挿入されていて散漫な記憶しかなかった。今回改めて観ると監督マーティン・スコッセシの意図が少し理解できました。後年ロビー・ロバートソンへの批判も多いけれど、画面でみるとバンドを維持するのが限界に達したという意味は人間関係ではなくて音楽的なものだったのだと思いました。行くところまで行ってしまったものしか味わえない空しさだったのでしょう。
本編は画面も音も綺麗になって迫力あるものでした。照明も凝っていて映画っぽくなっていたのを別添音声解説で知ることができて良かったです。映画監督って大変な才能が無いとできませんね。あと、特典映像で初めて観る事の出来た「ジャム2」でニール・ヤングが主体になって引っ張っている姿が微笑ましかった。彼の暖かい人間性を感じてしまった。に比べるとクラプトンってあっさりした人なんだなぁと思いました。音楽映画では他に抜きん出ている傑作ですね。これだけの歴史的なイベントだったのですから、当然より完全なフルバージョンで後年発売されるでしょう、楽しみです。
ラスト・ワルツ 特別編 [DVD]
本編に関しては他の方におまかせするとして。音声解説はロビー&スコセッシ、そして出演ミュージシャン&スタッフによるものの二つ。後者のほうはとても興味深く必見。特にリックファンとして心に残ったのはドクター・ジョンの「リックは不運に見舞われていた。普通の人なら乗り越えられないような。長い間悲しみを抱えていた・・」というコメント。確かに映画の中でもリックはどこか悲しげなまなざしをしていると感じていたけど。いったいリックに何が?ガースも「ザ・バンドでは辛かった」と言っていた。裏側にはファンが計り知れないものがあったのだろう。ミュージシャン&スタッフによるコメントには時おりすごく遠回しにロビーに対してシニカルさを感じさせる部分があるのもまたおもしろいのである。
ジーニアス・ラヴ ~永遠の愛
2004年の6月10日、肝臓疾患で亡くなったレイ・チャールズのラスト・アルバム。その内容のなんと豪華なことか!ノラ・ジョーンズ、ジェームス・テイラー、ダイアナ・クラール、エルトン・ジョン、ナタリー・コール、ボニー・レイット、ウィリー・ネルソン、マイケル・マクドナルド、BBキング、グラディス・ナイト、ジョニー・マティス、ヴァン・モリソン等々。どの曲にも素晴らしいパートナーを得て、きっと最高に幸せだったに違いない。
これが最後のレコーデイングになることをみんなが知っていたんでしょうか。この素晴らしいラストアルバムを聞いてみんなでレイ・チャールズの死を悼むとともに大いに楽しませてもらいましょう。