八甲田山 特別愛蔵版 [DVD]
1977年に劇場公開されたこの作品は、戦後の日本映画の黄金期を支えた傑出した映画人が集結して完成された最後の作品のひとつということができると思う。
このあと、日本映画界は急速に矮小化して、「零細業界」へと没落していくことになる。
今日の多数の映画人を特徴づける、卑小な「個」の世界に埋没した視野狭窄は、こうした作品を創出した世代が年老いていくなかで、支配的なものとなり、今日まで映画芸術を呪縛することになるのである。
黒澤 明を起点として、この作品に参加したひとびと(橋本 忍・野村 芳太郎・森谷司郎)に継承されてきたのは、端的にいえば、「天」の視点から人間をとらえることのできる垂直的な感性である。
換言すれば、それは、その最善の意味における「悲劇の感性」ということができるかもしれない。
真の意味で人間が自己の器と対峙するのは、悲劇のただなかにおいてであることは、時代をこえて、変わらない。
しかし、そのことを忘却するとき、われわれは不可避的に「人間の視点」に埋没し、運命を生きる活力を去勢されていくことになる。
この奇跡のような作品を鑑賞しながら、こうした偉大な作品を創出する感性が数十年前にはまだこの国に息づいていたことを知り、いたく感銘した。
高倉健 想〜sou〜 俳優生活五〇年
正直言って、写真集としてもエッセイとしても中途半端な感じがしました。
秘蔵プライベート写真。期待に反して、矢張り私生活を感じるものはありません。家族や幼少時代の写真は貴重かも知れませんが、私にはあまり興味が無かった。僅かでも普段暮らしている街や、住居、友人等の雰囲気の感じられる写真を見たかった。
反面、私生活が観えない事がスターであり、カリスマである健さんの魅力でもあり・・。矛盾してますが素直な気持ちです。
エッセイも他の著書やインタビュー等で既に語られている様な内容が多く、新鮮味は薄い。と感じました。
主演以外の全ての出演作品が紹介されているのは貴重なのではないでしょうか。私自身はほとんど70年代以降の作品しか知りませんから、データベースとしてはかなり価値を感じます。「刑事物語」の様なほんの1シーンしか出演していない作品も掲載されていました。「大人の事情」でしょうが、作品の紹介は必要最低限です。
失礼を承知で言いますが、健さんも70を過ぎて、今後新たに作成される映画や書籍も僅かではないでしょうか。所謂記念碑的な写真集として私はとらえました。
私事で蛇足となりますが、実父の次に尊敬する人は高倉健とチャップリンです。
駅 STATION [DVD]
一人暮らしの男性は、このDVDを大晦日に観るべきです。毎年観るべきです。内容の素晴らしさは皆さんが語っています通り《最高》です。くだらんTV番組など観ずに、ゆっくりと、こたつでコンビニの一人鍋と日本酒をやりながら鑑賞し、年が明けたら初詣に行きましょう。倍賞千恵子みたいないい女に出逢えるかも知れませんぜ。