これを見ればドラッカーが60分で分かるDVD
ドラッカー論そのものが深く語られているものではありません。
ドラッカーの著書が、どのような社会情勢や研究から何を論じてきたか。
ドラッカー論の歴史が、当時の映像と本人や教え子達の肉声を中心に語られています。
例えば・・・
「経済人の終わり」 ⇒ ファシズム全体主義を論じる
「産業人の未来」 ⇒ 工場、産業社会全般を論じる
「企業とは何か」 ⇒ GM調査の結果をまとめた
「現代の経営」 ⇒ コンサルタントの経験をまとめた
「ネクスト・ソサエティ」 ⇒ 歴史 経済 文学 社会分野から変化する世界を論じる
などなど。
著書からだけでは知ることができないドラッカーの世界観・歴史観を
映像を通して知ることができる良い作品だと思います。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
池上彰さんが2010年話題になった出来事の関係者を呼んで、
質問をするという企画のテレビ番組で、
池上さんがもしドラの著者に「売れたのは表紙が萌えキャラだからじゃないですか?」
といきなり鋭い質問をしていました。
その時は池上さん少し失礼なんじゃない?
と思いましたが、いざ遅ればせながらも購入して読んでみると、
なぜか池上さんの言葉が頭から離れない……。
純粋に小説として読みたい人は100%避けるのが無難です。
小説家を志したばかりの少年・少女が書きあげたけど、
恥ずかしくて他人には読ませられない処女作みたいなレベルなので。
最初二行でそれが実感できる珍しい本です。
さてこの作品の評価を分けるのは用途であると考えます。
前述のように萌えキャラ、青春要素に惹かれて小説として読んだ人の評価は最悪。
ビジネスの簡易入門書として読んだ人の評価は中々高評価。
まあ人それぞれですけどね……。
最初からわかっていることでありますが、あくまでドラッカーの「マネジメント」を
高校野球の女子高生マネジャーの視点で分かりやすく解説した本であり、
それ以上でもそれ以下でもない。
マネジメントも理解でき、青春小説としても面白いという過度な期待はしないのが無難でしょう。
感嘆すべき点はこの本が売れたこと。
出版不況の現在において本を売ることは容易なことではないはずなのに、
そんな時代に200万部売ったというだけでもすごい。
ダイヤモンド社はまさにドラッカーの理念を体現した会社。
もしドラは体現した書籍です。
しかしあの文章はいただけない。
とても読者(顧客)の視点にたって綴ったものとは思えない。
正直、読者に対して失礼なレベルだ。
ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
もともと私は経営学や戦略論なんていうのは、たまたまうまくいった企業の成功事例を無理やり方程式にし、バズワードを多用して相手を煙に巻くペテン商法の一つだと思っていた。
その証拠に「戦略コンサルティング」だという人間が語った話で、記憶に残るものが一つもない。
この著者は経営学の大学教授が普通は突っ込んでほしくはないであろう「実務経験ゼロ」を前提にし、もし経営学者が実際に経営しても多くの場合会社をつぶす事になるであろうとも認めている。
その上で経営学者としてしか分析できない経営を、物語風に噛み砕いて語っており。また、実は、経営学の法則性以外のところに経営の重きを置いているところが他の経営本とは大きく違い、面白かった。
事例としてトヨタやセブンイレブンやベネッセやブックオフ、Amazonやスターバックス等々といった、誰もが知っている企業の戦略の重要ポイントが物語として語られ、スッと自分の中に落ちてくる。
数あるECサイトの中、当時の経営セオリーを無視したAmazonが成功した物語。またその成功を裏付けるために創業者の書いたビジネス・コンセプトは非常に興味深い。実際にそのコンセプトは現在のECビジネス全般を簡潔に表すストーリーになっていたりする。
またガリバーの創業者が、ビジネスのタイミングを間違えて同じビジネスモデルで1度失敗しているエピソードなど興味深い。
これ一冊でさまざまな戦略ツールの使い方や長所・短所も理解できるし、話のネタを仕入れ先としても最適であろうと思う。
究極の判断力を身につけるインバスケット思考
昇格選考試験の対象者となったことを試験の1月前に言われて購入しました。
管理する立場になることで日常的に必要となる、あるいはそいう立場に当然期待される思考方法や行動が一つの物語(20問の演習問題)を通して分かりやすく書いてあると感じました。
ページも300ページ強なので、斜め読みのできる方であれば1日で読み切ることができると思います。(演習問題にどう取り組むかは別ですけど…) 僕は寝る前、移動時間そして始業前に各々30〜40分ほど掛けて通し読みして2日かかりました・・・。
仕事の段取りと優先順位分けが上手で素早く仕事をこなしている人で、相手が欲しい情報を的確に出せている人には不要かもしれません。必ずしもできているわけではない僕には試験対策以上に自分の仕事の方法を見直す機会になるなど大変勉強になりました。
インバスケットという試験に対しては解答の方式が違うこともあって直接役に立つものではないと思われますが、解答を練る作業には効果が大きいと感じます。したがって1度の通し読みで終わらせるものではなく、演習と通し読みを複数回繰り返すことで初めて効果を期待できる本だと思いました。ということで、僕は何度も読むことに決めました。
The Nature of Managerial Work
マネジャーの仕事は?と聞かれれば、マネジメントをすること。では、マネジするとは一体何か、というと、計画したり、組織したり、統制したり・・・と経営学のテキストが言っていることはわかった気になるものの、「それで、何なの?」と問い返したくなるようなものばかりです。
しかし、本書の問題意識は、「マネジャーは一体何をしているのか」という素朴なものです。著者は、分刻みで電話や会議に追われているマネジャーの本当の姿を明らかにしています。無味乾燥な理論ではなくて、実際にマネジャーが企業で何をしているのかを明らかにしたという点で、実践と理論の掛け橋になっているような優れた本だと思います。