子ども学のまなざし
NHKの深夜便で小林登先生のお話を聞いて感動。
娘の妊娠報告で早速読んでおくようにと購入した。
少子化や小家族制度での子供受難の時代にあって、出産前から母子関係を良くしていくために一読あれと勧めます。
オバマを拒絶するアメリカ―レイシズム2.0にひそむ白人の差別意識―
90年代から「白人の白人以外の人間に対する優越的差別意識」について全米で積極的に講義、講演、メディア活動を行っている著者が、オバマ大統領選出は「オバマ大統領がこの差別意識を越えたのではなく、白人有権者の差別意識こそその原動力であった」として、形を変えた(version2) 差別意識が大きな問題を生じる可能性があることを説いています。過去の事実・事件・現象を例としてこの問題の長い歴史と、複雑で絡み合った経緯を示してくれますが、頭では分かっても気持ちがついていかない人の心理、ものの見方は様々、物事は双方向ということでしょうから、一体どうなれば一番良いのか(白人でない読者としては特に)これという結論が正直見えてきません。ただ、オバマ大統領の政策は非常に微妙で神経質なバランスの上に成り立つということは理解できるような気がします。過大な期待も失望もすべきでないですね。一方本文中にある数々の「差別の具体例(ローンや災害救済措置から医療実験まで)」を著者は「多くの白人はその事実を知らされていないし、知らない」と指摘しています(例は近代、またニュース性のあるものが多い)。事実か否かは別に、何にしても洋の東西を問わず、正確な事実把握・情報開示が一番大切であり、これなしにすべてが始まらない事を強く意識させられます。しかしオバマ大統領(とホワイトハウス)は史上最も動けない大統領になる可能性がある、そしてそれが「やはり機能しませんでしたね」と逆に証明してしまう可能性があると(是非はともかく、またアメリカ国民が決めることですが、アメリカの政治経済が日本に与える影響が余りに大きい実情)少し心配になります。
からゆきさん おキクの生涯
タイトルに引かれて購入。読み始めたらあまりに面白くて一気に読み終えた。
内容は被差別部落に生まれた1人の女性「おキク」が「からゆきさん」としてマレーシアに渡って、数奇な生涯をおくったその軌跡を詳細にえがいたもの。
読み始めて驚いた。著者が徹底的に現地・現場を確認していることだ。あとがきを読んでなるほどと思った。著者は十数年も前から「からゆきさん」に興味をもち、おキクの生誕地や東南アジア諸国を何度も訪問したという。国会図書館に3人で200日も日参し、資料コピーが天井に届くほどになったというからその徹底ぶりがわかる。
この本は調査が徹底しているばかりではない。たった1人の生涯をえがいているだけなのだが、読む人に多くのことを考えさせる構成になっている被差別部落のことについて著者は大上段には何も主張していない。しかしおキクの生涯を追っていくことで読む者に明確なメッセージを送っている。戦前の日本という国が女性をどう扱ってきたのかも良くわかり「女性問題」としても奥深いものがある。また国家と個人の関係についても考えさせられるものがあった。
「からゆきさん」という戦前の問題を取り上げながら、著者は現代の日本および日本人に多くのメッセージを送っているのではないだろうか。若い人を含め、多くの人にぜひとも読んでもらいたい本だ。
神の国アメリカの論理
アメリカは日本と違い神を信じている人が大多数を占めている。物事を良い・悪いの2つにはっきり分けたがる性格や世界の警察を担おうとする正義感もそこに基づいているのでは。そんな話もありますが、主にはアメリカを宗教と政治の2つ視点に分けて展望するような本だと思います。
聖書では中絶・同性愛がどのように否定されているのか、宗派ごとにどのように解釈しているのか。政治上で中絶・同性愛がどのように争点になり、法律でどのように規制されているのか。
「題名の”神の国”というのは宗教の国という意味で、聖書にある神の国とは違う」と前書きにあるのでここにも書いておきます。どれか一つの宗派・解釈に偏った本ではないのでアメリカに興味のある人みんなにおすすめです。