俺たちの朝 DVD-BOX II
「俺たちの朝」DVD-BOX2、後半の24話と特典ディスクが収められている。
ストーリーは、三人のジーンズ・ショップが約12話(約3か月分)。見直す前はもっと長くやっていた印象があった。それだけインパクトが強いパートだったのだと思う。このパートは三人にとって苦難の連続で最終的には失敗するが、三人はこの試練を受け止め整理する。前半で培われた絆がさらに強くなり、喧嘩をしながらも三人の絆で乗り切っていく。恐らく一人であれば潰れてしまうような試練でも、三人であればこその展開だった。
次いで金沢→逗子→鹿児島→稲村ケ崎→極楽寺と戻りオッスの船出でラストとなる。このパートは別れと旅立ちのパートでもあると思う。美雪ちゃん(原田美枝子)との別れ、オッスの父(北村和夫)と兄妹との別れ、美沙子(上村香子)との別れ。いずれも悲しくも心に刻まれる名場面だ。原田美枝子の空気感はあの若さで異質ともいえるオーラがあるし、北村和夫の別れの場面の表情の微妙な変化はベテランという言葉だけでは表現できない凄い演技。
今改めて観ると、美沙子は三人、ヌケ、ツナギに次ぐ第六のメンバーとでもいうべき重要な役だった。オッスに恋心を抱きつつ、三人を温かく見守る。上村香子も役の雰囲気にピッタリだったと思う。
最終回に至るまでの数話を観ると、実はチュー(小倉一郎)がストーリー上で果たす役割は一見した以上に大きかったと思う。気弱で最も等身大の人物、夢と挫折の間で悩み苦しむ姿は多くの人が身につまされたのではないだろうか。
古都鎌倉を舞台としどこか懐かしく、自然も豊かなロケ地。この鎌倉の中でも、とりわけ古い鎌倉の雰囲気が残り、地域としても小ぢんまりしている極楽寺〜稲村ケ崎の近辺を主な舞台としたことも、このドラマの登場人物やストーリーの良さをさらに際立たせる効果があった。
客演の中村玉緒(美雪の母)や野村昭子(稲村ケ崎のアパートの大家)の演技も大きな役割を果たしていた。
特典ディスクではプロデューサーの岡田晋吉氏と助監督を務めた新城卓氏が制作の背景について話し、途中で勝野洋と小倉一郎が会話に加わる。このドラマの企画・制作に関わったお二人のコメントはドラマの背景を知る上でも貴重。四人でドラマのテーマについて語られるが、最終的には人と人との思いやり、優しさ。単純ではあるが、普遍的で今の時代に失われつつあるが、人として伝えていかなければならないものがこのドラマには生き生きと描かれているのだと思う。
尚、第45話でヌケ作(秋野太作)が夜の海辺で一人酒を飲みながら「ゴンドラの唄」を口ずさむシーンがある。黒澤明監督の「生きる」にかすかに影響を受けたシーンだと感じた。
俺たちの旅 DVD BOOK なんとかする会社編 (宝島MOOK)
このムックは、番組後半の社会人編である。DVDには26話から最終回までの予告編と、グズ六の兄(中尾彬)が登場する第39話と最終回を収録している。本は、時代ゆえ写真が少ないのは仕方ないが、各回のあらすじのほか、脚本家・ゲスト・時代背景・他の青春ドラマ紹介など多角的に取り上げていて読み応え十分。その後作られた3本のスペシャル、さらにエンディングの詩の紹介もうれしい。
「俺たちの旅」はなぜかDVDではレンタルされていないので(ビデオテープの時はあったのに)、手ごろな価格で家庭で楽しめるのはありがたい。できればこのムック方式でも全話発売して欲しい。
ゴールデン☆ベスト
ヒット・シングルをセールス順に上位10曲(なのでもちろん、「愛のメモリー」からスタート。「私の歌」と「真夜中のエレベーター」は、同じシングルのA面B面)と、各種タイアップのついた楽曲から年代順に10曲、で全20曲、CD1枚にびっしり。思う存分、しげる―愛をこめて、敬称略―の甘く、時にワイルドな歌声に酔いしれることができる、ビクター時代のベスト盤である。
前半が売り上げ順、後半が年代順という構成ながら、意外にも流れはスムーズで、メリハリがきいており、聴いていて楽しい。
不滅の名曲「愛のメモリー」も当然いいけれど、それ以外の楽曲の中にも、自分なりのお気に入りを見つけ、また再発見することができる喜びがある。
リアルタイムでは小6の頃だった「私の歌」を聴くと、まるで子供の頃のような素直な気持ちがよみがえってくるし、しげる自身がコブラの声を演じたアニメ映画『コブラ』主題歌「Daydream Romance」も懐かしく胸に響く。少し肩の力を抜いたような、筒美京平さんらしい大人のディスコ・サウンド「銀河特急」、井上大輔さんならではのロケンロール「JAKA JAKA」あたりには、いま聴いて「おっ……!」と感じさせるカッコよさがあった。実写版映画『火の鳥』の同名主題歌のスケールの大きさ、ライオンズの優勝セールの時などに大音量で流れている「地平を駈ける獅子を見た」での、しげるの伸びやかなハイトーンボイスも、ハートをわしづかみだ。
聴けば聴くほど、しげるに限らず、布施明、前川清、尾崎紀世彦(敬称略。名前はブレイク順)………と、日本はもっとこういった、歌のうまい人たちのことを大切にすべきなんじゃないか、という思いがこみ上げてくるのだった。
濱口英樹さんによる、コンパクトでわかりやすく詳細な解説つき。楽曲ごとに初出発売データ、オリコン最高位、タイアップの詳細もわかるようになっている。
ちなみに、ジャケット写真はビクター時代ではなく、最近のしげるである。
君たちに明日はない (新潮文庫)
あの垣根涼介が山本周五郎賞を受賞?と何か賦におちない気分で読み始めた。お馴染みのアウトローたちの姿はなく、日本のどこにでもある社会の一面を「リストラ」というテーマで切り取った作品群となっている。凄腕の面接担当官とリストラ候補者との会話は面白く、笑いありペーソスあり、はたまた業界固有の薀蓄も含まれ、確かにかなり面白い現代小説に仕上がっている。
しかし、しかしである。新しい読者層からお叱りを受けることを覚悟の上で言わせていただくと、『ワイルド・ソウル』『午前3時・・・』或いは『ヒートアイランド』で唸りを上げた垣根ワールドに浸った者にとっては、こういった方向はどうも欲求不満と言わざるを得ない。底辺に流れる激しい情熱や誰にも止められない疾走感(ドライヴ感?)を、肌のどこかでピリピリと感じながら読み進む楽しみが過去の垣根作品にはあった。確かに社会風刺も面白いテーマで取り組みたい気持ちも判らぬではないが(作者あとがきで触れられているとおり)、垣根氏にはもっと大きなプロットでドロ臭い作品を期待したい。
こういったシチュエーションなら奥田英朗という方がおられたが、サラリーマンの悲喜こもごもというテーマであれば荻原浩も結構面白く、『メリーゴーランド』や『神様から一言』あたりをお薦めしたい。今回は大変厳しい評価であることを承知で星3つとする。最後に、性描写のくどさについては私も結構気になった。
俺たちの旅・青春の詩~俺たちシリーズ主題歌・挿入歌集~
番組放送時、「カースケ」よりは一回りくらい若かったのですが、それでもかなり感情移入出来て、番組を見ていたことを思い出しました。元々、小椋佳さんのファンだったこともあり、「盆帰り」や俺たちの旅のエンディング「ただお前がいい」には改めて心を揺さぶられました。ひとつ困ったことは、車の中で聴いていると、涙がでそうになり、運転が危ないことです。