らせん (Blu-ray)
「リング」ファンならば分かっている「パラレルワールド」。
何やら貞子ばかりがトップスターにのし上がり(笑)、ついには3Dで登場するに至る
とは、原作者のみならず貞子もビックリだろう。
そもそも中田監督の「リング」はホラー突っ走り作品で、原作に比較的近い「らせん」が
割りを食ったことは否めないところだ。佐藤浩市もどこかの会見で「俺の出た「らせん」は
どこへ行った?」と語っていたのが面白かったが、確かに公開から10年以上経つと
ほぼ「無かったような」扱いを受けている。
しかし、よく考えると「リング」で予知能力があったことを明かしている高山が、
なぜ最後に貞子に襲われることを判らなかったのか?などいくつもの疑問がある。
もともと頭がいいから「ここは殺されておいて、幸いなことに親友に遺伝子学者が
いるので再生しよう」ということを予知・画策したのかも知れない。
そうするとあのビデオに高山が出てくるのも合点がいく。
よって、どんどんアトラクション化していく「貞子リング」の方が確かに面白いが、
個人的には本筋の「リング」「らせん」こそ理にかなった前後篇だと思う。
3作目の「ループ」が未だ映像化されないのは、さらに映像化が難しいパラレルだから
だろうが、まあこのウィルスで止めておいたのは正解かもしれない(笑)。
ブルーレイでの光と影の調和は素晴らしく、リングBD同様予告編しか収録されていないが、
DVDから買い替える価値は十分あると思う。
「リング」のあとで気合いを入れて観ると、あまりの「サスペンス重視」に落ちる
方も多いと聞くが、この作品がなければ謎も解けなかったので、星は5つです。
ever
デジモン作品でも有名な歌手、和田光司さんにとって3rdアルバムであり、ミニアルバムとしては初の作品。デジモンシリーズからのデビューから10年!のどの手術のためおよそ2年の活動休止を得ての復帰。復帰後もライブ活動を中心に活躍し、ついに8/1に発売。
デジモンという枠組みを超えた独自の音楽センス。ひとつひとつの歌詞、言葉が心に直接響く歌の数々。ぜひ聞いてもらいたい一枚です。ちなみに私のおすすめは「bravery」です。
楽園~加羽沢美濃+鈴木光司
「楽園」というとフワフワした柔らかい雰囲気の音楽を想像しますが、このアルバムは少し違います。
遠い遠い昔の、かつてはあったであろう今では見果てぬ夢のような場所、、、破壊された楽園、引き裂かれた運命の人、何万年もの時を越えて再会した二人、、そんなモチーフをピアノとストリングス、そして乾いたサックスの音で世界を作り上げていきます。加羽沢さんのアルバムの中でも特異な位置を占めるアルバムではないでしょうか。
豊かな残響の中で印象的なテーマが繰り返し用いられ、紆余曲折を経て最後は盛り上がってハッピーエンドで終わる、、、一遍の映画を見るようなつもりで聴いてみてほしいアルバムだと思います。
楽園
鈴木光司の壮大な冒険ファンタジー小説『楽園』からインスパイアされたイメージに対して、即興演奏を得意とするコンポーザー・ピアニストの加羽沢美濃が万華鏡のように次から次へと変化する曲想を持つ15曲をリスナーに届けたものです。
加羽沢美濃のピアノもステキですが、田中邦和のサックスが実にジャジーで見事な演奏を伝えています。後藤勇一郎ストリングスによる演奏も温かく、全体に感じられる豊穣の世界観は、加羽沢美濃の才能の豊かさを証明するかのようでした。
曲の構成は、以下の通りです。
1. 神話~プロローグ:ベリンジア/ユーラシアの大地/赤い鹿/ラピシア/侵略/北の回廊
2.楽園~南太平洋の孤島/楽園の神話/赤い鹿の石/楽園の祭り~略奪/航海
3.砂漠~ニューヨーク/砂漠/鍾乳洞~地底湖/エピローグ:ベリンジア
どれもステキですが、特に4曲目の「ラピシア」は情感豊かで、物凄く美しい音楽が展開していますので、何回も繰り返し聴きたくなりますね。メロディもハーモニーもリズムから質の高い香りが伝わってきます。
9曲目のメロディアスな「赤い鹿の石」もお気に入りの1曲です。可憐で、爽やかで、キラキラと光を浴びて輝くイメージは映像を見ているかのような鮮やかさでもってリスナーの感性を揺さぶります。
ジャズともクラシックともポップスというジャンルにも入らない曲想です。まさしく加羽沢美濃ワールドとも言うべき大きくて変化自在な音楽がめまぐるしく展開されて行きますので、あらゆるジャンルのリスナーに関心をもってもらえるものだと思っていますが・・・。
なぜ勉強するのか? [ソフトバンク新書]
1章で、なぜ勉強するのかという本書のテーマに答えている。知識を積むためでも、いい大学に入るためでもなく、理解力、想像力、表現力を身につけて社会をより良くするためだという主張が著者の経験を交えて語られる。子供向けのメッセージとしても素晴らしい。
しかし、論理的にと説く2章には疑問を拭えない。骨格上の発声機能と言語の獲得は別問題と言うが、これは脳に偏った見方ではないか。戦争中の非合理な意思決定を非難するが、社会科学の組織の理論では合理的なプレーヤーたちのせめぎ合いが全体として非合理な結果を生むことが示されている。ここは批判的に読む練習として良いかも知れない。
3章はまた良い。英語教育の改革案(早期化より内容)に賛成。妬みのために教員が夏休みも出勤しているという話には私も失望する。クレーマーの親たちのせいでいい人材が教師にならなくなり、結局我が子の首を絞めるという負の連鎖を考えなければならない。
4章には和算は他の学問と接点が無いとか、農耕民族だから神に祈るくらいしか出来ないといったおかしな記述もある。西洋に偏った見方にも驚かされる。基本的な主張は素晴らしいが、バランスをとるため加藤徹氏の「漢文の素養」「漢文力」などと読み比べるのも良いだろう。