ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ: 原子力を受け入れた日本 (ちくまプリマー新書)
「原子力を受け入れた日本」という副題に興味を持ち、読んでみた。
日本はどんな経緯で原子力を受け入れていったのか、田口ランディさんはどんなまなざしで持って今の原子力のありようをとらえているのだろうか、そんな関心から読んでみた。
「日本は原爆の被害にあったのにも関わらず、なぜ原子力を受け入れているのか?」
この疑問にせまっていくのだが、アメリカの陰謀、資本主義と共産主義の対立の影響などがある中で、結局が誰が悪いというわけではなく、小さな揺れがいくつか重なって、誰も意図していない今の状況が生まれているというのがわかる内容である。
それぞれの立場から見ると、その時その立場なりの正義があり、お互い同士で対話がなく、対立状態の中では人間のエゴが絡まり、何かしら全体は不幸な状態に進んでいく。
原子力利用の容認に関しても、「誰かを悪者にする議論は不毛」なのであって、最終的には「暗黙の民意の集大成」で現実がつくられているということである。
つまり、私たち一人一人の気持ちが影響しあって、大きな流れはできていくのである。
自分の中の感情に反応し、自分の外側に何か敵か犯人をつくり出し、自分の考えが正しいと主張し、対立を生んでいく。そんな反応的な態度が全体の事態を悪くするんだなと内省させられた。
そして著者は最後の方でこういった事態の解決の方向性を示してくれる。
「感情をコントロールすることを学び、どのように意見の異なる他者とも話し合いによる解決を放棄せず、貪欲さを捨て、バランス感覚を磨くことで問題を乗り切っていくことが、科学技術を発展させてしまった私たち人類の生きる道なのだと思われます。」
日頃、ついつい避けがちな対話だが、もう少しきちんとやってみようと思わせてくれた本である。
コンセント [DVD]
監督の中原俊という人の経歴は変わっている。東大文学部宗教学科卒という立派な学歴をもっていながら、わざわざ日活に入社してロマンポルノを撮っている。市川美和子の脱ぎっぷりも賞賛に値するが、どおりで本作品における濡れ場の演出が堂に入っていたわけだ。
田口ランディの原作を、黒沢清が撮っていたらきっとお子様向けのなんちゃってホラーになってしまったところだが、大人の観客でも鑑賞にたえうるきっちりとした作品に仕上がっている。特にDV親父の夏八木勲の鬼気迫る演技、自発的トランス症の兄(木下ほうか)の得体のしれない不気味さが、なんとも怖〜い作品だ。
死の臭いをかぎわけ、精神的に傷ついた者を治癒する能力をもった朝倉ユキ(市川美和子)をどのように映像化するのかがキーポイントとなるわけだが、本作品の中で比較的成功しているのではないかと思う。いかんせん、その能力を持つにいたった経緯の説明が弱い。兄の病の原因は劇中十分に説明されていたが、できれば作品のもう一つのテーマである彼女の超能力の起因について、つみきみほや特殊クリーニング屋の男を使って、東大卒らしいロジカルな解説を加えてほしかった。
アンテナ スペシャル・エディション [DVD]
内容だけを見ていると、目を覆いたくなる部分、耳を塞ぎたくなる部分が多くありそうですが、情緒というものが大切にされていて、登場人物たちの心の変化が美しく描かれているので、SMルームでのシーンや自傷シーンなどもみやすいです。バックに流れる曲、要所に出てくる鏡越しの風景…、色んなものが合図となって、作品の中に見ている私を引き込んでいきました。重要となる、SMルームでのマスターベーションを強要されるシーンは、主演・加瀬亮さんの圧倒的な演技力によって、リアルかつ美しいものになっています。主人公の心の鍵とも言える女王様の言葉に、何度見ても私は泣いてしまいます。
アルカナシカ 人はなぜ見えないものを見るのか
本書は小説ではない、まして“トンデモ本”でもない。ある人が書店で見かけたら帯のフレーズにギョッとするかもしれない、「それでも人はUFOを求める。」とデカデカと書かれているのだから。
田口ランディの著作を手に取ったのは初めてだった。どんな文章を綴る書き手なのか興味があったが、なかなか気になるものがなかった。私は“UFO”というフレーズに偏見はない。だからか「田口ランディはUFOも語るのか?」といった軽い気持ちで今回読み始めた。
ルポルタージュのようであり、エッセーのようでもある。著者の葛藤や疑問、確信などを包み隠さず吐露したような作品なのだろう。“UFO”というフレーズは全編を通して登場するが、それに焦点を当て過ぎたものではない。スプーン曲げ能力者たち[清田益章,秋山眞人,ユリ・ゲラー]を皮切りに「カントとスウェーデンボルグ」「シャーマンと幻覚キノコの変性意識」、トランスパーソナルやスピリチュアルといわれる世界に足を踏み込んだ著者の半生の記録だ。本書内でも触れられている森達也の『職業欄はエスパー』を読んでいるような感覚に似ている。“UFO”を軸にした「心と意識の探究ルポ」だ。
コンセント (幻冬舎文庫)
描写はさすがに上手で、するすると読んでいける。
終わり方が不可解ではあるが、後半は衝撃的で、
内容もおもしろかった。
嗜好によっては、まったく受け付けない人もいると思うが、
個人的には精神世界の話などは、おもしろく読めた。
ただ、性的描写が多すぎると思った。
友達に薦める時におもしろくても躊躇してしまう。