ベスト・オブ・EMIクラシックス ロジェー・ワーグナー合唱団/アメリカを歌う
スピリチュアルとフォスターとアメリカ民謡というロジェー・ワーグナーの残した代表的な演奏から有名なものをまとめた編集物ですが、彼のアレンジの素晴らしさと合唱団の質の高さを知るには好都合のアルバムと言えるでしょう。
「汝はそこに」は、主イエス・キリストの受難を歌った黒人霊歌の中でも荘重な趣をもった敬虔な曲です。ロジェー・ワーグナーが健在だった頃、その演奏を聴いたことがあります。編曲者のメゾ・ソプラノのサリー・テリーも同行しており、「汝はそこに」の名演奏を目の当たりにしました。重厚なハーモニーは、ここに収録された演奏同様、感動的でした。
スピリチュアルは「魂の叫び」だと表現されています。アメリカの奴隷制度の元、過酷な環境にあった彼らが現世の苦悩を逃れるため、聖書に救いを求め、それを歌として表現しました。その苦悩を昇華した後には、敬虔な深い宗教的感動がありました。その深みある合唱とこれらのジャンルが生まれた歴史的経緯を知れば、歌い継ぐべき音楽ジャンルの一つだと言う認識は現代でも通用すると思っています。得られる感動は決して風化していません。
また昭和40年代から50年代の混声合唱団や男声合唱団において、ここでも数曲収録されているフォスターの合唱曲は定番でした。プログラム・ビルディングには欠かせない存在で、そのお手本がこのロジェー・ワーグナー合唱団でした。
近年では、その生みだされた音楽の入手が困難になっているようです。時代とともに愛される合唱曲は変化しますが、もう少し歌われても良いのでは、と収録された名曲の数々を聴きながら感傷にふけっています。
ジェリコの戦い+2
コールマン・ホーキンス(Coleman Hawkins 1904年11月21日〜1969年5月19日)は、アメリカ合衆国ミズーリ州出身のジャズ・サックス奏者。アルバムは1962年のヴィレッジ・ゲイトのライブで邦題「ジェリコの戦い」コールマン・ホーキンスの後期の会心作。活動開始が1923年フレッチャー・ヘンダーソン楽団、この楽団にニューオリンズ出身のルイ・アームストロングが加入したことが転機となる。ジャズ・サックスという楽器をサッチモのコルネット風に演奏した最初の人といわれている。以後60年代までと足跡はひじょうに長く、サックス奏者に限らず多くのその後のミュージシャンに多大な影響を与えた。「ジェリコの戦い」は旧約聖書に登場する古代イスラエルのヨシュア(ジョシュア)がカナン人の都市ジェリコの侵略を歌ったものであるが、黒人霊歌となりジャズのスタンダード・ナンバーとなる。本来曲名だが「ジェリコの戦い」といったらこのアルバムの代名詞になってしまった。共演者はピアノのトミー・フラナガン、ベースのメイジャー・ホリー、ドラムがエディ・ロックと全体としての完成度が高く超有名盤となった。
(青木高見)
ロジェ・ワーグナー合唱曲集 (2) ジェリコの戦い~黒人霊歌集
黒人霊歌集として定番ともいえる『ロジェ・ワーグナー合唱曲集』の入手が困難になっているようです。それだけ、このジャンルを取り上げる合唱団が減ったことを意味しています。時代とともに愛される合唱曲は変化しますが、昭和40年代から50年代の混声合唱団や男声合唱団において、「黒人霊歌」はプログラム・ビルディングには欠かせないジャンルの一つでした。
特にロジェ・ワーグナーが指揮した彼の合唱団の演奏(LP)はお手本として繰り返し聴かれたものでした。数十年前、まだロジェ・ワーグナーが生きていて、彼の指揮で歌っているステージでのロジェ・ワーグナー合唱団の歌声は脳裏に焼きついています。
皆が愛したロジェ・ワーグナー合唱団の演奏の再現にこの楽譜は欠かせないものでした。もともと輸入ピースとしてバラ売りされていたものを、音楽之友社が1冊にまとめて出版したもので、それは貴重なものだと今でも思っています。
収録曲を邦題で記載します。ジェリコの戦い、ゆけモーゼ、時には母のない子のように、汝はそこに、逃れゆかん、誰も知らない私の悩み、深い河、揺れよ幌馬車の8曲です。
「黒人霊歌」というタイトルは具合が悪い、ということで近年ではスピリチュアルというジャンルでくくられることも多くなっています。その深みある合唱とこれらのジャンルが生まれた歴史的経緯を知れば、歌い継ぐべき音楽ジャンルの一つだと言う認識は現代でも通用すると思っています。入手が難しくなっていますが、再び廉価での発売を期待して・・・・。
高貴なる葡萄酒を讃えて
一言で言えば「バカウマ!」がギッシリ詰まったアルバムです。
各地の演奏会から吹奏楽連盟主催のアンサンブルコンテストに到るまで、国内で最も頻繁に演奏される金管アンサンブルの作品であろう『高貴なる葡萄酒を讃えて(Homage to The Noble Grape)』が当CDの一押し収録曲なのは言うまでもありません。同曲の資料音源として聴きたいのはもちろんのこと、その卓越した演奏技術と構成力、そしてアンザンブルの美しさは、プロアマ問わず金管奏者として一度は聴いておきたい素晴らしい収録かと思います。
日本では吹奏楽が管楽器の中心ですが、このロンドン・ブラスの様に一流の管弦楽団の金管奏者による演奏も、今まで以上に気軽に愉しめるようになれば良いなと考えています。そして、アンサンブルコンテストだけで終わるのではなく、数多くの演奏会でより沢山の観客の皆さんに金管アンサンブルの魅力を味わってもらおう、そう思えるような刺激材料になる事を願っています。
他の収録曲も素晴らしい内容です。ヤン・クーツィールの『子供のサーカス』やJ.S.バッハの『バディネリ』など、アンサンブルだけでなくソリストとしても最高峰の演奏を楽しませてくれます。エンターテイメント性と芸術性の二つを見事に融和させた名曲と名演奏の数々を是非ともお楽しみください。
HAWKS!ALIVE!AT THE GATE/ジェリコの戦い+2
たくましい音色で最高のスゥイングを聴かせるテナー Coleman Hawkinks が、冒頭より「All the Things You Are」「ジェリコの戦い」「Mack The Knife」の名曲を連発する NYC は Village Gate における62年ライブ。ピアノは Tommy Flanaganだ。
1924年に Fletcher Henderson Orchestra に加入し頭角を現した Hawkins は、1930年代後半に Lester Young がソフト・トーンを活かした新しいテナースタイルを登場させるまで最も影響力あるテナー奏者として君臨したが、ジャズ横揺れの魅力をダイレクトに伝えるその「ホーキンス・スタイル」テナーは時を経るということがなく、いつ聴いても問答無用にスゥイングの楽しさがグイグイと伝わてきて素晴らしい。