気分はいつもブッチギリ―自分へのチャレンジなくしてトップはない! (Rakuda books)
競輪界の往年のスーパースターである中野浩一の自叙伝。天才レーサーの名をほしいままにした「ミスター競輪」は、日本プロスポーツ界初の1億円プレーヤーであり、競輪ビッグタイトルの常連であり、その生涯成績は勝率5割、2着連対率は7割、世界選手権プロスクラッチ競技では前人未踏の10連覇という大記録を打ち立てている。著者の考えるプロフェッショナリズムや私生活、練習、天才論を読めば、一流アスリートは例外なく怜悧かつ繊細であることが見て取れる。本書が書かれたのは、著者がまだ現役選手であり、世界選手権7連覇を成し遂げたばかりの頃である。当時の勢いがそのまま文章になったような本書は読者を晴れ晴れとした気持ちにさせる何かを持っている。それは小澤征爾の「僕の音楽武者修業」や岡本太郎の「青春ピカソ」にも通底する、若さゆえの強さ、ひたむきさ、そして己が決めた道を邁進する潔さではないだろうか。大人になるのに、誰もが通らなければならない青春があるとすれば、何かにひたむきに打ち込むことほど輝かしく、かけがえのないものはない。本書は競輪ファンや自転車競技に興味のある人はもちろんのこと、プロスポーツ選手をめざす人、未来ある若い人達にも是非読んでいただきたい一書である。著者のユーモアセンスもこれまたいい。
競輪選手になるには (なるにはBOOKS)
本重量約200グラム。職業ガイドを目的とした「なるにはBOOKS」の一冊。シリーズ共通で1章「ドキュメント」2章「仕事の世界」3章「なるにはコース」に分かれている。著者は「世界のナカノ」こと中野浩一。ぼくは自転車、日本人といえば中野浩一をすぐに思い浮かべる。彼だけが突出して前後に代表する人が出てこないのが寂しい。沖縄県内に競輪場が無く、競輪に全くなじみはない。オリンピックを観てもルールがわからなくて楽しめない。そんな前知識なしの状態だがおもしろく読めた。選手の生活を中心に書かれているのだが、全く違う世界で新鮮だ。もちろんギャンブルに関するダークな部分は全くないので実録的面白みはないが、競輪学校は丸坊主、競輪出場前は携帯電話を取り上げられ相部屋で缶詰状態など、新たに知ること多し。