虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
ミステリーは普段さほど読まないんですが、
amazonにて、”おすすめ”本としてマッチングされたのが目に留まり、読んでみました。
作者のバックグラウンドはひとまず抜きにして、率直に面白かったです。
徹底的に一人称な物語で、主人公視点で物語が描かれてます。
とても冷静な印象を受ける心理描写は、陰鬱とも言えるし、少し病的とも言えるかも。
戦闘シーンが多数ある本作において、これが独特のスピード感を生み出してます。
ガンアクションシーン中に、クラシック音楽が聞こえてくるようなクールさがありますね。
近未来SFミステリーとして、ポイントは押さえられています。
暗殺という特殊任務にあたるのが、アメリカ人主人公。
生体組織が人工培養されるようになり、あらゆる工業製品の部材として使用される世界。
彼が使う武器、乗り込む乗り物、網膜に纏うセンシングフィルム等に、
これら最新テクノロジーが使われています。
単純に最先端技術というだけでなく、生命体を利用・培養してるところが、グロテスク。
しかし、タイトルとなっている虐殺器官というのは、上記ような気味の悪い最新プロダクツではありません。
この虐殺器官を主人公が探るというのが大筋です。
近未来の管理社会や、異常に発達してしまうバイオテクノロジーに対する問題提起やら、
SF小説らしいツボも押さえられていきます。
とはいえこの本の一番の特徴は、主人公の文学的素養が半端ないことかもしれません。
登場人物とのやり取りの半分以上が分かんないネタでした。。
そこに付いていけない読者としては、かなりテンポが崩された印象があります。
いろんな意味でテクニカルな本なのかもしれませんね。