楽器の世界コレクション1 - ブランシェのチェンバロ - 18世紀ヴェルサイユ・クラヴサン音楽の美の世界 浜松市楽器博物館所蔵の名器“ブランシェ”による [DVD]
ヨーロッパの多くの楽器博物館が所蔵している名器と言われるもののなかでも、実際の演奏に役立つ楽器はそれほど多くない。特にチェンバロは構造が複雑かつデリケートで、共鳴体の器自体が最も重要な弦楽器などと違って、専門家による頻繁なメンテナンスが欠かせないために、ともすると博物館を飾る単なる調度品に成り下がっている場合が殆んどだ。こうした楽器の往時の響きをイメージするのは甚だ困難だが、今回浜松市楽器博物館の館長の英断によって行われた完璧とも言える修復作業の結果がこのレクチャー・コンサートに結実している。DVDとしては35分程度の短いものだが、収録内容は価値が高くまた充実している。
パリのアトリエ、ブランシェ工房によって1765年に製作されたこのチェンバロが、実際の演奏に使用できるまでの修復期間は実に10年に及んでいる。勿論撥弦部分のインストールだけでなく、音響板や台座の装飾も含めての大修復だったようだが、こうして歴史的な名器が蘇生した。ピッチは修復に携わった人や演奏家の中野氏自身の長い期間の試行錯誤の結果a=400、いわゆるヴェルサイユ・ピッチに落ち着いたようだ。この低いピッチによって音色に特有の典雅な雰囲気が醸し出されている。また調律も平均律ではないので、スケールを聴いていると平均律を聴き慣れた私達の耳には意外な感じを与えるが、それによって得られる和声の響きは非常に美しい。
このライヴ・コンサートで演奏されている曲目は当時の楽器の機能を最大限に活かした、純粋にチェンバロで再現することを前提に書かれたフランス・バロック、ロココの作品で、中野氏の優れた演奏によってこれらの曲が持っている魅力が余すところ無く引き出されている。それは様々なタイプの装飾音に満たされたひたすら華美な音楽だが、ある意味では刹那的で、当時の宮廷生活の虚飾や倦怠さえも髣髴とさせる興味深いものだ。
ラヴェル ピアノ曲集(3) ソナチネ
ラベルから直々にレッスンを受けたペルルミュテールのコメント満載の
エディション。その意味では現状でもっともリサーチされたと思われる
春秋社の版と双璧をなす版。
でも意外に凄いことが書かれているわけではない。実は幾つかの場合を
除いて極めて普通のコメントが書かれている。まあプロの演奏家にとっ
てはその幾つかのコメントが重要になるのだということはわかる。
レイアウトとかは全体的にすっきりしていて見やすい。コメントがある
割にはうるさくならない感じで使いやすい楽譜。
ラヴェル:ピアノ作品全集
いろいろと批判され評価されていますが、わたしは恐らくこのCDに出会えていなければラヴェルにはまることはなかったでしょう。演奏家のなかには技巧にこだわりすぎて、肝心のラヴェル独特のいい雰囲気を逸してしまっている人がいますが、やっぱり大切なのは演奏の速さではないと確信させてくれます。「道化師」でこれほど雰囲気を理解した演奏は聴いたことがありません。「オンディーヌ」は本当に和ませてくれます。感心させる演奏ではなく感動させる演奏です。やっぱりピアニストってこうあるべきですよ。
ベスト・バロック100
ベスト100シリーズは、ジャズにしても、クラッシックにしても、楽曲間の雰囲気の違いが大きく、CDチェンジャーでランダムに聞いていると雰囲気・気分ががたがたしてしまう。でも、このバロックは比較的楽曲間の雰囲気の違いが小さくランダムでかけていてもずーっと気分よく時間が流れる。それでいて、楽器の組み合わせの違いなどから微妙な雰囲気の揺れもあってバックグラウンドミュージックとして最適と思えた。
ただ(やむを得ないことだが)全部収録しきれずに途中で終わってしまっている曲もある。その分だけ一つ星を減らした。でも、フェードアウトにも気を配っているせいか、あまり唐突な終わり方を感じさせず、無理がない。