醍醐寺の謎―京都の旅 (祥伝社黄金文庫)
毎年春には醍醐寺の枝垂桜をめでることを恒例行事にしている。
醍醐寺の由来は聖宝という賢者が10世紀に山でであった横尾明神という神様が湧き出る水を味わい、「醍醐味なるかな」といったことに由来しているそうだ。醍醐とは今で言うチーズのようなものと理解している。
この本はしかし、その後醍醐寺を引き継いだ義演と、醍醐の桜を愛し、一大イベントの花見を企画した秀吉のを軸とし、それにかかわった女たちの話に焦点がおかれている。
醍醐寺の霊宝館にある醍醐の花見の絵を見ると、秀吉が正室おねと、側室淀殿、そして多数の侍女をまわりに従えてこの世の春を謳歌している様子が伺えるが、この本を読むと、それがいかにすさまじかったのかがわかる。現在の価値にして数十億のお金がかけられたらしいので、映画大奥を越えた豪華絢爛さがあったのだろう。
そして、天下は秀吉から徳川へ移り、醍醐の花見に参加した女たちの運命はみな、簡単なものではなかった。
秀吉が花見の後にやりたかった醍醐の紅葉狩り。その無念さがひしひしとつたわってくる読後感である。このように女に焦点をあてた時代絵巻を描いた本は数少ないと思う。良い意味でいうとトピックが豊富、しかし話題がいろいろ飛んでしまうところが読みずらい面もあるが、春を彩る桜を通じて違う時代がつながる不思議な感覚を味わえる本である。
今の大阪城って家康が建てたって知ってました?