オレステス [DVD]
本作は、中島朋子女史が迫力ある演技で重要な役割を果たし、彼女が真の主演に感じました。一般には、藤原竜也に対する絶賛が多いようで、期待して観れば、セリフが聞き取り難くここまで絶賛される理由が正直よく解りませんでした。本作は、中島朋子と名脇役が藤原竜也を盛り立てていると感じざるを得ませんでした。
玻璃の天 (文春文庫)
女子学習院の生徒のお嬢様を主人公として描かれるのは,1933 (昭和8) 年の東京の上流階級の世界.作者は厖大な資料を駆使して,今では完全に失われてしまった社会を昨日のことのように描き出す.この時代の空気は,ここに書かれた通り,物言えば唇寒し所か,生命の危険さえある漠然たるテロの恐怖に満ちたものであった.その空気が実感できるのが作者の手柄である.私はこの恐ろしい空気の中を生きただけに,作者に感謝したい.それと日本の古典文学,中華の漢文文書に対する教養は,この時代の初等中等教育の水準の高さの結果であることに注意したい.戦後の学制改革,教育改革は本質的に敗戦国の教育水準を下げる企みで,その結果が現在の嘆かわしい状態なのである.貴族階級が亡びるのはよいとしても,知的水準までが亡びるのは口惜しい.そういうことをこのお嬢様シリーズは痛感させてくれる.強く推薦.なお,会話の応答で,返す,という表現はこの時代ではあり得ない (お言葉を返すようですが,と言って反論する時に限る).それから食材という言葉はなかった.強いて言えば素材か材料だろう.難点はその程度で,真に見上げた時代再現である.
黒猫の遊歩あるいは美学講義
本屋さんで新刊平積みだったのを手に取りました。
正直にいえば『賞を取った作品』のジャケ買いでした(苦笑)。
誰かが殺され、血が流れ、悲鳴がこだまする様な内容ではなく
日常のちょっとした謎解きです。(それだって日常的にあるものではないと思うけど)
誰かの『恋物語』(『恋愛』という単語よりもこちらが合うよ思う)を縦糸にミステリーが絡み、
それを黒猫と助手の二人が紐解いていく、短編の連作です。
どちらかというと、キャラ2人の性格もあり、淡々とお話は進みます。
そこに横糸として、主人公2人のじれったさが絡むのですが、
私はこういう淡々としたお話と、2人のキャラが好きなので文句無く★は5つ。
こうしてみると、私はこの作品をミステリーというより、恋愛小説と捕らえているのかもしれないです。
そういえば、この『黒猫〜』の新作短編がカドカワミステリー12月号に掲載されています。
こちらも、誰かの恋物語が絡みます。