牧場の少女カトリ(8) [DVD]
世界名作劇場の作品、どれも手抜きのない、真剣勝負な作品ばかりですが、その中でもやはり作り手の思いが
垣間見える一瞬があると思います。ここさえ見てくれたら、もうそれで十分伝わる、そんな一瞬です。
例えば『ナンとジョー先生』で字の読めないナットが自分に自信を持つためにおまじないを唱える場面であったり、
『私のあしながおじさん』でふと、たいした前触れなく風景が全て止まり、ジュディが「みんながんばってる」と
独白する瞬間であったり…。私は、カトリの思いは第三十話に凝縮されていると思います。
前のお屋敷の奥様に「医者になどとてもなれない」と言われ、帰り道、唐突に親しい人との別れを迎えます。
そんな一日の最後、お屋敷のぼっちゃんに「みにくいアヒルの子」を読んであげながら、涙を流してしまいます。
人の大きさ、温かさ、マルティの台詞にもあった「夢は必ずかなう」というこの物語のテーマが一日の描写から伝わってきました。
貧しい家畜番から夢をかなえるために努力する、というこの物語、私は大好きです。
いちばん所得格差が少ない現代日本でさえ、学歴序列は所得序列と高い相関係数を示すし、私自身、そこからの
脱却を模索していた節があります。なんだか自分の境遇をカトリに重ね合わせて見てしまいました。
また、この話のおかげでアンデルセンのすばらしい童話集に出会うことができました。
この第30話からは、作り手の真剣な思いが痛いほどに伝わってきて、心から大好きです。
この物語に出会えてよかった、と思える瞬間でした。
また、残りの3話も一生懸命算数を勉強したり、靴屋の親方の御伽噺を聞いたり、とカトリらしいおもしろい話で大好きです。
牧場の少女カトリ
この原作本のことを、アニメの小説本を探していた事がきっかけとなって知り読んでみました。
確かに、アニメの中に出てくる、仕事をしながらも学校に通って勉強に励み、将来医者になりたいという夢をもって頑張るカトリには出会えません。
でも、時代背景やカトリのおかれている奉公人としての生活からすると、裁縫や機織りの仕方を自ら進んで仕事の中で身に付け、周りの人の好意や親切に感謝しながら、農家の奥さんのあり方を実際に出会う奉公先の奥さんを通して学び成長していく姿に自然な感動を受けました。
これからお嫁に行くときに、自分の嫁ぎ先の農場を丘の上から眺めてカトリが言う一言に、 「みんな、ここでくらしていることがしあわせだと思うようにしてあげよう。そうしたら私は決して不幸せなんかになりっこない、みんなが幸福である。」とあるが、彼女のそれまでの生き方や苦労から得たもの、信仰心がすべて表れていると思いました。
やっぱりカトリはかわいくて、心のきれいな少女であり、素敵な女性でした。 本文は児童向けに訳されているため、安易に読んでしまいがちになりますが、本編を流れる様々な人々に対するカトリの思いやりは子供たちには必ず伝わる作品だと思います。
牧場の少女カトリ(4) [DVD]
第四巻でカトリは家畜番なのに奥様を元気にしたということで休みをもらったり、服を作ってもらったり、果てには
羊をひろったりとかなりラッキーです。でも、羊に「シロ」というありきたりな名前をつけ、かわいいでしょ?
という辺り、いかにも実際的で堅くて笑っちゃいます。
麻の刈り入れの手伝いで、何度も麻を一纏めにするのに失敗した後、「できた!」と地味に喜んでいる辺り、カトリらしい。
また、カトリは独立運動に携わる青年アッキから勉強する大切さを学び、毎晩毎晩本を読み始めます。
本当に真面目一辺倒な女の子で、あぁ、がんばらなきゃな、という気にさせられました。
そんな、地味ーな話なんですが、どうしておもしろいんだろう?というのは相変わらずでした。
地味で真面目で何の面白みも無いはずなのに何度見てもあきない、おもしろい、というの、カトリ全巻に渡る共通のテーマです。
また、主人公の声優さんはアニメチックなアニメサイドの方らしく、世界名作劇場の中では新鮮で好きです。
風景にも温かみのあった第三巻とは違い、ここから数巻、太陽のほとんど出ない冬に向かって次第に厳しさを見せていきます。
フィンランドの素朴な、わびしい情景と静かな迫力のある音楽が、冬が近づいてきてより一層の調和を見せ始める
第4巻です。20世紀初頭のフィンランド、刈り入れの秋、なんだか厳しさが妙に伝わってきて、一層
真面目な登場人物たちの描写がリアルに見えます。
牧場の少女カトリ 完結版 [DVD]
親子離れ離れになり祖父母の所へ預けられたカトリの活躍と波乱が描かれた作品がこちらですね。
仕事の持ち場を離れたと見なされ鞭でたたかれたり、犬のアベルが毒付き?の肉を食べさせられそうになったり、子供に遊び相手を強制されられ誤って花瓶を割ってしまったりと可哀相な面もありますが、何と言っても一番は最後には病室で母と再会する名場面は泣けます。
余談ですが、 何しろ今から26年前の1984年の作品ということで宇宙刑事シャイダーと同時期に放送されていましたからね。
とにかく改めて見れて感激しました。世界名作劇場ファンなら買って損はないでしょう。
個人的には、アルプスの少女ハイジ、赤毛のアン、ロミオの青い空等と並んで好きな作品です。
隅々まで見たい方はDVDを全巻揃えてみるのも一興ですね。
牧場の少女カトリ (竹書房文庫―世界名作劇場)
アニメ『牧場の少女カトリ』で衝撃を受けた人は
物足りなさを感じるかもしれません。
アニメ『カトリ』のいいところは細かい動きを無視しないところです。
そういった細かいことが結構削除されているのは残念でした。
例えば、グニンラおばあさんとの別れが記述されていないのは問題です。
なぜなら、この別れがカトリとグニンラにとって最後の別れになるのです。
涙が見たかったです。
評価できる点は、物語の最後で馬車に揺られながら、
カトリと母サラの心情がきちんと説明されていることです。
よくできていると思います。