花と流れ星 (幻冬舎文庫)
死んだ妻に会う方法を見つける為に霊現象探求所を構える真備、
死んだ妻の妹で助手を務める凛、
そんな凛にほのかに想いを寄せる小説家の道尾。
そんな三人が集う探求所を今日も様々な悩みを抱えた人たちが訪れる。
日常ミステリ。短編集。
一番最初に収録されている「流れ星のつくり方」が一番好きです。
少年のいたずらっぽさがどこかくすぐったく、そして物悲しい。
そうか、謎解きは逆光になっている少年の姿から始まっていたのか
と思いました。
カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)
開幕直後の詐欺行為を連発していくところで引き込まれ、最後まで
一気に読むことができました。何と言ってもキャラクター魅力的なのが
この作品の売りなのかなと思います。
主人公が過去に体験した出来事が最後まできちんと関ってきて、そのせいか
途中で飽きが来なかったのでしょう。そういった人間の部分を逃げずに書ける
のが道尾さんの一番素敵なところだと、この作品で再認識できました。
ラットマン (光文社文庫)
本来は単純だった事件(事故)が人の想いや誤解により複雑化していく。
エレベーターを舞台にした作中作や、洋楽のコピーバンドのエピソードなどで過剰に演出をしているが、案外メインストーリーは単純かも。
「ラットマン」という心理学用語を持ち出してきて、もっともらしく大げさに言っているが、単なる思い込みによる誤解ではないのか?
とにかくこの著者は演出が巧みだ。エンターテインメント性の高いミステリーだった。
光
道尾作品の最新作が出たとのことで,発売日当日に購入し先ほど読み終わりました。 道尾作品を全て読んでいるという前提でレビューを書かせていただきます。が,これは素人の単なる評価(感想)に過ぎません。 道尾作品は,『背の目』に始まります。レェ,オグロアラダ,ロゴという奇怪な文章に始まり,本格的なミステリー小説を堪能できる内容でした。 また,『シャドウ』や『ソロモンの犬』等では,物語の後半に「なんだ!!そういうことか!!」と,思わず唸ってしまうようなどんでん返しがあり,読者をいい意味でミスリーディングさせる「才能」を存分に発揮された作品が続きます。 その「才能」が特に発揮されたのが『カラスの親指』であり,大薮春彦賞を受賞された『龍神の雨』なのだろうと思います。 その後,道尾作品は上記の作品の特徴である「どんでん返し」のある内容から,濃密な人間関係を描く物語へとシフトチェンジされます。『球体の蛇』,『光媒の花』,『月と蟹』,『水の柩』はいずれも人間関係や家族関係に悩みつつ,それでも成長していく主人公を見事に描いており,読んでいる側に訴えかけるものが相当あったように思います。この点で,『光媒の花』が山本周五郎賞,『月と蟹』が直木賞を受賞されたことは,十分に納得できるものとなっています。 (前置きが長くなり申し訳ないです…) 本作品『光』は,上述の分類を前提とすれば後者に分類されると思います。特に,『月と蟹』で描かれた,少年時代の懐かしい気持ちに戻ることのできる点は本作品でも上手く表現されていました。 一方で,道尾作品に「どんでん返し」を期待される読者の方には少々物足りないのかもしれません。が,本作品の随所にも小さなどんでん返しはあることを付言しておきます。 本作品は近時の道尾作品の傾向に沿った内容で,私個人は満足しました。が,どんでん返しに期待された方の思いを込めて-1とします。
向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)
プロットのうまさを感じさせる作品。
始めの四分の一くらいで、ちょっと異質というか不快感を感じてしまったけれど、
プロットがうまいので、段々とひきこまれて、後半は疾走してしまいます。
情報の出し方が非常によくできている作品だなと。
ほかの方も書いてるように、どんでん返しがあるとは言え、
ミステリーとは言わないでしょう。
極端は人物設定に嫌悪感を抱く人もいると思いますね。
憎めないキャラを持ってきているのに、読後の爽やかさはなかったです。
この人物設定がこの作家ならではの持ち味なのかなと感じます。