ANIME'S COMPILATION BEST<通常盤>
KOTOKOさんのオリジナルアルバムはどちらかというと“かっこいい”系ですが、
アニメ主題歌を集めたこのベストアルバムはその成り立ちのせいか
“楽しい”系が多めですね。
Lords of Finance: 1929, The Great Depression, and the Bankers who Broke the World
…という神懸かり的タイミングの一冊。2010年度のピュリッツァー賞初めコレでもかという数の賞を受賞し、ベストセラーになり、これが処女出版になる著者さんにとってはこれ以上ない展開だろう。ちなみに副題の「The bankers who broke the world」は受け狙いが過ぎているような。きっと担当編集者さんがゴリ押ししたに違いない。
経済史というと経済が主役になってしまうきらいがある。著者さんは「いや、経済は人間の蠢きだ。自分は『人間』を描く」と決意したと思われる。その決意に沿って、第一次世界大戦から大恐慌までの主要各国の金融混乱を英米独仏の中央銀行総裁たちの交流と横からギャアギャア言うケインズの姿を通して一望していく。根幹は金本位制のルールの下での政策金利の上げ下げの話なのだが、このように政策決定者の顔を生々しく描写されると、人間の誤謬性とそこから生じてしまった世界的カタストロフェの凄まじいまでの非対称性に対する悲痛感が増すというか、まあ正直、やり切れないったらありゃしない、であった。エピローグがスッキリと全体のまとめになっているのでそこから読み始めてもいい。金本位制ゲームのルールがよく分かっている方々にはさらに味わい深いのだろうが、私は「金の備蓄が相応にないとお札が刷り刷り出来ないんだよな、確か」程度のカラ認識で読んでいたが十分に楽しめた。
ちなみに金融恐慌の原因というのは本書が言明するほどにハッキリと解明されたものなのだろうか。オーストリア学者さんの本を読むとまた全く逆のコトが書いてあるし、シロートの頭はグルグルするばかりである。本書の成功などオーストリア学者さんたちにしたら「ケインズ派のプロパガンダ」なのだろうなあ。ともあれ、立派な文章で生き生きと展開する満足のいく歴史書だった。
アンナ・マクダレーナ・バッハの年代記 (公開題「アンナ・マグダレーナ・バッハの日記」) [DVD]
約25年前に都内で単館上映されていたのを観て、何と劇的側面を封印した映画かと驚いた記憶がある。その時は題が「年代記」ではなく「日記」だった。
この度、DVDを入手して1967年発表の映画であることに気がついた。ヨーロッパ映画が既成の枠を広げる熱気に満ちていた時代の作品だ。レオンハルト扮するバッハの演奏シーンと時折映し出される楽譜だけでほとんど構成されている。演奏シーンは1シーン1カットで、カメラの動きも少なく、同時録音の一発撮り。アンナ・マクダレーナのモノローグで筋の進行がわかるが、夫と妻が会話することもなく、そもそもバッハの台詞がほとんどない。
しかし、このような禁欲的な映画もあり、と私は支持する。バッハの曲や生涯を予めある程度知っておいた方がいいだろう。67年だからまだピリオド楽器での演奏が脚光を浴び始めた頃だが、当時の時代考証で再現されたバッハの曲(の断片)の演奏が延々続くのは、バッハ愛好者にはたまらない。添付資料も充実しており、モノクロだが画質は良い。
同じ音楽家の生涯を描いた映画でも、モーツァルトの「アマデウス」とは対極にある作品だ。