ハナコ@ラバトリー(2)(完) (CRコミックス)
新ジャンルとも言えるほのぼの幽霊ストーリー、堂々の完結です。
施川さんの独創的なシナリオと、秋★枝さんのきれいな絵が非常に素晴らしかった。
短編集ということですが、どれもが思わず感嘆してしまうような話ばかり。
そしてラストは「何故主人公がトイレの花子さんなのか……」という核心の種明かしもあります。
特にこの回は花子さんという、知名度の高いキャラクタを利用しながらも、矛盾なく、そして感動できる話となっており、買ったその日に何度も読み返してしまいました。
出来ればもっともっとこの作品を読みたかったという思いもありますが、ここまでスッキリと完結させたことに感服しています。
全てにおいて文句なし。
☆5つです。
森のテグー 1 (ヤングチャンピオンコミックス)
「森のテグー」は施川ユウキにとって新しいタイプの漫画だと思う。
顕著なのは舞台設定だ。「がんばれ酢めし疑獄!!」は無秩序にキャラが存在しベースとなるものはなかった。「サナギさん」は学校、「もずくウォーキング」は家族という集団が土台にあった。
この「森のテグー」での舞台は森の中の村。どこか閉鎖的ながら、今までより一回り広い社会である。その中には学校も家庭もあり、各キャラの関係性も友達、家族、村民、仕事仲間と様々だ。
さらに主人公のテグーはネコ。他にも動物たち、謎の生物も村民として生活しており、キャラモノの要素もある。
と、まるで過去の総括的な作品にも思えてくる。
村の生活を覗いて見ると、木の家に住み、青空の下で学んでいるという自然に溢れた暮らしをしている。そこはイメージ通り。
だが視点を変えれば。図書館や天文台などの研究的施設。また貨幣制度があり、町から行商が来るという文化の発達。村の名物である風車も、電力を売ることで村の財政を支えているという機能を果たしている。動物たちもやり取りだけなら人間と相違ない。
というように、非常に現実的な部分が浮き彫りになってくる。架空の社会を描くために、今まで描かなくても良かった設定が掘り下げられているせいだ。
何より奇妙なのが、村には人間もいることだ。森の外には当然、人間の村もあるはず。少なくとも電気を利用している文明が。となると、この未発達な森の存在は一体?
要するに、「森のテグー」は世界観から興味深い作品になっているのだ。
果たして、これは現代を舞台にしたファンタジーなのか。あるいは未来の物語なんだろうか。そして、この世界を通じて施川ユウキは何を描こうとしているのか。ゲラゲラ笑いながら、そんなことまで考えてしまう。これはファンシーな皮を被った問題作だと思う。
ついでに余談。
テグー父の名前はアンヒューマ。人間のハラダさんが彼を「アンヒューマさん」と呼ぶのがやけに引っかかるのだが。
もずく、ウォーキング! 2 (ヤングチャンピオンコミックス)
1年ぶり、待望の2巻。
内容は相変わらず鋭い。
巻頭カラー6ページは、もずく以上にキャラ立ちまくりの“名無し猫”が主役。
彼女のあけすけな物言いはクールでクレバー(あと笑い)だが、ラストひとコマでちょっと切なくなる。
いい!!実にいいぞ、ね子!!
しかし、今回は1巻に輪をかけて言葉の世界を縦横無尽に遊戯してる感が強い。
もずくはホントに犬か!?
飼い主サチのほがらか天然っぷりが、さらにもずくの哲学思考(妄想?)癖を際立たせる。
どう考えても彼女は、もずくの10分の1ほどにも知識や語彙といったものは豊富ではないはずだ。
しかし、もずくがあれこれ「頭イイ語彙」を駆使して我々に語りかけるからこそ、サチの純粋無垢なたった一言の輝きが、これまた際立って見えるのだろう。
お互いがお互いを際立たせるこの幸福な互助関係。
羨ましい限りです。
今巻のおススメは、第39話「イグドラシル」。
だから、ホントに犬か!?!?っての(笑)
数百ページの哲学書にも匹敵する驚異の6ページだ。
ハナコ@ラバトリー(1)(CRコミックス)
飛び抜けた発想が売りの施川ユウキが原作を担当し、繊細な筆致で魅せる秋★枝が作画を担当。
スマホを愛用する幽霊の花子が、トイレで様々な人間と出会う現代版「トイレの花子さん」。
といってもホラー漫画ではなく、怪談というよりも童話/おとぎ話に近い。
一話一話が豊潤な内容であり何度も読み返せる作品。
個人的に一番気に入ったエピソードは、
「公衆便所の中で交わされる、故障で野球部を辞めようとするピッチャーと引き留めるヒロインとの会話。ピッチャーとヒロインは各個室の壁に
長編小説が書かれているのを見つけ、個室ごとに章立てしてあるその小説を読み進めていく。小説は『結末を書くことができない小説家』が
書き進めているもので、今回も結末に悩みながら、ピッチャーとヒロインとのやりとりを最奥の個室の中で聞いていた。そして小説の意外な結末と
もっと意外なこのエピソードの結末に至る・・・」
森のテグー 2 (ヤングチャンピオンコミックス)
1巻から1年以上待ったのに、もう完結。
施川ユウキの作品は何十回も読み直すものなので
もっと続いて欲しかったなー。
相変わらず日常のことをちょっと
違うところから見る視点と、
ファンシーな絵柄に合わない毒と、
癒しが渾然一体となっている。