國民の創生 CCP-256 [DVD]
廉価版がやっと発売されました。映画を論ずる人で、まだこの作品を見たことがない人にはぜひ見ていただきたい。映画で描き出せるリアリズムの原点があります。もしフランスで作られたこの当時の映画を見比べていただくと、この映画のすごさがわかります。
映画は「光」の芸術だと思い知らされます。
国民の創生 グリフィス短編集 クリティカル・エディション [DVD]
まず、商品を手に取ると、通常のDVDと比較してずしりと重みがあります。これは特典の小冊子の重みです。パッケージには『解説リーフレット全64頁』とありますが、普通、リーフレットって一枚の紙を2つ折りにしたものを言うんじゃなかったでしたっけ?とにかく作品解説、DISC2の短編一本一本の解説、キャスト・スタッフの紹介など、とても情報量が多いです。DVDの仕様自体は特典映像など無く本編と字幕選択、チャプターのみですがそれを十分以上に補っています。
本編は1926年公開の再公開版であり、他メーカーで出ているサウンド版と違い現在残っているパージョンの中では最良のものです。リリアン・ギッシュが自伝の中で「多くのシーンが支離滅裂になっている」と語ったサウンド版はいくつかのメーカーから出ていますが、この再公開バージョンはこれまで中々見ることが難しいものだったと思います。
グリフィスが、南部人から見た史実を、実際に南北戦争を経験した親世代の人達から見聞きした話を元に、グリフィス組と呼ばれた同士達と作った作品です。当時の写真を参考にそのままそっくりにセットを作ったり、ドキュメンタリー映画のような迫力を持った作品です。南部から見た南北戦争という点では『風とともに去りぬ』と同じですが、リリアン・ギッシュは「国民の創生がドキュメンタリーなら風とともに去りぬはミュージカル」というようなことを自伝で語っています(異論はあるかもしれませんが…)。
DISC2の短編集はいずれも日本初ソフト化とのことで、とても貴重なものだと思います。出演者の中にメアリー・ピックフォードやブランチ・スウィートらスターの名前を見ることが出来ます。ピックフォードは、幼い頃からリリアン・ギッシュの友人でしたが、ある事情からグリフィス組を抜けました。脱退前の作品だと思います。ブランチ・スウィートは当初国民の創生で主役を演じる予定だった、華やかで可愛らしい女優さんです。映画の父と呼ばれながら、今まで日本では見ることが難しかったグリフィスの短編作品を見れるようになり、とてもうれしく思います。
國民の創生 [DVD]
故・淀川長治さんの解説付きというユニークな仕様のDVDです。再生を始めると生前の淀川さんの語りから始まり、本編、本編終了後にまた静止画の解説が入ります。映画を愛した淀川さんの語りは全ての映画に対して暖かく、そして作品の感想よりも監督や役者の人となりや、作品の背景を多く語ってくれるのでとてもためになります。
映画の父、デイヴィッド・ウォーク・グリフィスの代表作です。主演はもともとブランチ・スウィートというとても可愛らしい女優さんの予定だったのですが、彼女がテストでミスを連発してしまい、リリアン・ギッシュにその役が回ってきました。その他もメエ・マーシュ、ロバート・ハーロン、ドナルド・クリスプ等俳優陣、撮影のビリー・ビッツァー…という『グリフィス組』と呼ばれた、思いを同じくする人々によってこの映画は作られています。
この映画によってグリフィスは多くの人に誤解を与えましたが、グリフィスにとって、南北戦争は親世代が経験した出来事であり、遠い過去の出来事ではなかったため、親世代の南部の人々が経験したこと、感じたことを生で聞き、出来るだけ再現したものであり、当時の写真が手に入ると、その写真そのままにセットを組んで撮影したりもしました。グリフィス自身は黒人の乳母に育てられたし、黒人の友人も沢山いました。英雄的に登場するKKKは現代の私たちの目で見ると衝撃的ですが、反面、悪辣な白人に騙され、利用されて道を誤ってしまう善良な黒人も登場します。
注意点ですが、このDVDに収録されているバージョンはサウンド版と言われるものです。このバージョンは本編の時間が短く、主演のリリアン・ギッシュは自伝で「カットしすぎて多くの場面が支離滅裂になっている」と評しています。別バージョンのものも発売されているので、見比べてみるのもいいのでは。