ポスト・カード
アップル・レーベルの復活盤でこれほど嬉しいCDはありません。ビートルズのポール・マッカートニーが並々ならぬ意欲を持って制作したメリー・ホプキンのデビュー・アルバム。1「悲しき天使」は、イギリスでビートルズの「ヘイ・ジュード」に替わって1位に輝き、全米でもミリオン・セラー、日本のオリコンで1位に輝く大ヒット曲です。古いロシア民謡を歌う歌手をポールが見つけていたときに、メリー・ホプキンを知り自ら電話して契約したそうです。ポールのアレンジも見事ですし、何回でも繰り返し聞きたくなります。そして、ポールはメリーのために、ドノバンやジョージ・マーティンに曲を依頼。さらに369でギター、7でウクレレを担当。ドノバンも239に参加。復刻に際して、ボーナス・トラッ!クで16ピート・シーガーの名曲やイタリア語とスペイン語の「悲しき天使」が聞けます。ジャケットの写真は、ポールの奥さんとなるリンダが撮ったものです。ポップスのお好きな方なら是非お聞きください。気分の良くなるアルバムです。
ベスト・オブ・メリー・ホプキン
ほぼ四半世紀ぶりにメリーの歌声を聴きました。感無量です。いまの曲と比べて編曲がシンプルで、はじめは物足りなさを感じましたが、しばらくたつうちに、これぞメリーだ!と、「現役」当時を思い出しました。これほど純粋で透明な歌声のシンガーが、イギリスにいたのだと、再認識させられました。
アルバムは、前半がヒット曲、後半が殆ど知られていないフォークソングと、二面性をもち、メリーのスナップ写真やシングル版レコードのジャケットが数多く収められているほか、現役当時では語られない、メリーと曲の解説があり、メリーのファンには十分満足できる内容と申せましょう。
私の8歳の豚児も、「ケ・セラ・セラ」を口ずさんでいます。
昨日より若く
ハーベストガーデンは福岡出身のシンガーソングライター藤原聡子のソロユニット名。
2年前のデビューCD『HAIN』はシンプルなアコースティックサウンドをバックにのびやかで美しい清涼感の漂うヴォーカルを聴かせてくれ、久々に正統派の大物女性シンガーの登場に拍手をおくりました。そんな彼女の待望の2ndCD『昨日より若く』。透明感のある鮮やかな色彩で描かれた彼女のポートレートが印象的です。作者は昨年
福岡でプライベートなライブを行った際知り合った柳田烈伸(やなぎたたけのぶ)さんによるもの。タイトルと調和していて素敵です。全7曲、カバーとオリジナルが半々といったところですが、全曲オリジナルと言っていいほどに彼女のものになっている印象です。前作にくらべ当人の作品が増えたことによりより個性が前面に押し出され、
より説得力のあるヴォーカルが堪能できます。全曲を通じてそれぞれの歌の世界にスッと入っていける感じですが
特に1曲目の「あったララるら」は彼女のアイデンティティが徒然に語られて、それをまた”あったララるら”という言葉で煙に巻いていくようなとても不思議で面白い曲です。そして彼女の少しウェットなすばらしい歌唱が聴けるエンディング曲にしてタイトルにもなっている「昨日より若く」。原曲はL⇔Rの「YoungerThanYesterday」ですが、しんみりと、でもキラキラと詞が心に伝わってきます。3・11の震災でざわついた心にはこんな曲が必要な気がします。
ポスト・カード(紙ジャケット仕様)
曲想、スタジオの空気、そしてメリー・ホプキンの歌声・・・いずれも「古き良き」香りがします。
これをかけながら紅茶を飲むか・・・ギネスビールを飲むか・・・。いずれにしてもゆったりとした時間が流れます。個人的には大阪万博の熱狂とこのアルバムの素朴さがミスマッチで、なんとも言えない郷愁を感じます。現在の「デジタルポップス」に比べるといずれの曲もずいぶん「素朴」ですが、それがまたイギリスの田園の空気、風、匂いを感じさせてくれる逸品だと思います。オリジナルにはないヒット曲「Good-bye」その他ボーナストラックもあり、お得だと思いますが、「歌詞」カードというものはないのですね(笑)
CDに「青いリンゴ」が印刷されていて、胸が熱くなりました。