ノバ・カルミナ
高橋鮎生なるアーチストのCDを初めて聴いた。当作にスティーライ・スパンのマディー・プライヤーとピーター・ナイト、それにフェアポートのデイヴ・マタックスが参加していなければ、興味を抱かなかっただろう。
さて、中身だが、これが中中素晴らしい。曲目は中世時代の学者達が書いた詩集『カルミナ。ブラーナ』のなかから3曲、それ以外は鮎生作詩作曲による。鮎生はプサルトリー、ハープ、ギター、ベル、キーボードそして三弦等いろいろな楽器を使い、その楽器の持つ味わいを生かし、中世音楽フレーバー漂う新しいオリジナルな音楽を作っている。マディー・プライヤーの澄んだヴォイスは天空まで響き、デイヴ・マタックスのドラムスは大地の脈を打つ。加えて、鮎生のヴォーカルは古城に漂うき雲のように夢幻性を帯びている。
ここで表現されている古代〜中世ヨーロッパ人の『聖なる水の感覚』や『季節感』はわれわれ日本人の宗教観や自然観とも通じる。その感受性を豊かに表現した素晴らしいアルバムだ。
RED MOON
80年代より様々なフィールドで活動を続けている高橋鮎生さんと、太田裕美さんのコラボレーション作。タブラの音がエキゾチックな雰囲気を醸し出す民族音楽的な1曲目、フリーキーなギターと電子オルガンが飛び交う高揚感を感じさせる2曲目、日本の伝統歌に大胆なアレンジを施した3曲目、アラブ音楽とテクノが融合した5曲目、レゲエのリズムに様々なサンプリング音が耳に飛び込んでくるまさに曲名どおりの脈打つ鼓動を思わせる7曲目、スコットランドのフォークソングの9曲目など、ジャンルを超えた多種多様な曲が収録されています。それぞれの曲の完成度の高さには驚かされるとともに、静謐とは異なる動的なエネルギーをこの作品に感じました。
太田裕美さんの心に響く優しげで美しい声と、高橋鮎生さんのジャンルに縛られることのない幅広い優れた才能を堪能させてもらいました。