再婚生活 私のうつ闘病日記 (角川文庫)
やっぱり文緒さんの文章が大好きです! もっと悲惨な内容を想像していたのでちょっと面食らいました(^O^) 笑える(楽しくて)ところも満載です。鬱=眠れない、ではないのですね〜、眠っても疲れているってのはお辛いでしょうが…、私の方が全然寝てねー!
群青の夜の羽毛布 [DVD]
大学の先生がムンクの絵「思春期」の解釈を述べる:
「少女の影は、子供時代の家族の庇護から離れる未来への怯えであり、不安であり、希望でもある。暗い牢獄の中で常灯を失くした人形のように...。」と、これは監督さん(「がんばっていきまっしょい」も大好き)の予告でもある。
ヒロインが図書館で見ていた絵だ。図書館は彼女にとって、唯一のシェルターだ。毛布と言えば、よく母親の過保護のメタファーとしてよく使われるが、彼女にとって、家庭はけっして安らぎの場ではありえない。こわーい母親がいるからだ。スティーブ・キングの「ミザリー」を彷彿させるような、ホラータッチだ。
その母親から彼と寝たと知らされ、クソババアと罵倒して家を飛び出す。雨の中を走って、気がつくと図書館の前。まるで母胎回帰の如く。
24才とはいえ、父親の愛人のリストカットを目の前で見せられて以来彼女の成長は止まってしまったのであろう。しかし、クソババアの一言で彼女はトラウマから脱する。観客も鬼婆の呪縛から解き放たれる。その爽快感は「キャリー」のラストシーンに匹敵する。
などと、書いてきましたが、けっしてホラー映画ではありませんよ。
「私たちが好きだったこと」で不安神経症を演じる夏川結衣もよかったが、対人恐怖症という心の病める清楚なお嬢さん役に、透明感のある美しい人、本上まなみがぴったりはまり役です。
ただ、TVでは暗い家の中とか、図書館前の木陰では、彼女の微妙な顔の陰影が見にくくて残念。これからDVDで見る人は部屋を真っ暗にして見て下さい。また、エンディングのテーマ曲鬼束ちひろの「茨の海」もいい。
映画を見てから、本上まなみを思い出しながら、原作を読み直すとまた泣けるよ。
みんないってしまう (角川文庫)
「喪失」をテーマにした短編集。
「いってしまうもの」は恋人や友達、両親、プライドや信頼、感情だったり、価値観だったりする。
12の短編には12人の人間がいてそれぞれ違うものを失い、違うものを拾う。
それらの物語を読むうちにどれかは自分に共感するものがあるだろう。それはきっと自分の失いたくないもなのだろう。
『ドーナッツ・リング』『まくらともだち』『片恋症候群』『泣かずに眠れ』
おすすめなのではなく共感できたもの。
実際にあったら怖い話もあるけど。
浜野雪江さんのあとがきがよかったので紹介。
「それぞれの結末はストーリー上の終末を想像させると同時に、読者一人一人に
「あなたにとってはどうすることが本当の幸せですか?」
と、その人の人間性なり人生観を問うている。
つまりその瞬間、読み手はいやでも心の奥底で眠っている自分自身の本質と向き合わねばならず、
その結果、意外にすんなり答えが出てくる場合もあれば、
樹海の入り口でおいでおいでをしている手にまんまとからめとられる場合もある。
答えは読み手の数だけ用意されている。」
ひとり上手な結婚
山本文緒さんの小説が好きで、このエッセイも手にしてみました。
山本さん、小説ももちろん良いですが、このエッセイかなり面白かったです。
内容は結婚についてのetc
どうしたら結婚できるの? 絶対結婚しなきゃいけないの?
人気恋愛小説家である山本さんと、漫画家である伊藤さん
(ちなみに吉田戦車さんの奥様です)が、コミックを交えながら結婚のツボについて語ります。
これが中々ユーモアを交えてはいるものの確信に触れた内容で、
読者の質問に対して鋭い的確なアンサーになっています。
けらえいこさんとのゲストトークも収録してあり、
読み応えのある味の濃いエッセイになっていました。
面白かったです。
群青の夜の羽毛布 [DVD]
小説が面白かったので、見てみました。
本上まなみの「さとる」玉木宏の「鉄男」藤真利子の「母」、それぞれが,はまり役だったと思います。特に藤真利子は良かったです。厳格で、いつもブラウスのボタンをしっかり上まで留めている彼女が、「女」として鉄男に迫るシーンなどは、鬼気迫るものがありました。
ただ、原作と比べ、つくりが大雑把で、薄い感じが否めませんでした。さとるの対人恐怖症の描き方が、もっと彼女の言葉として出てもいいのではないかと思ったのでした。鉄男に対してまで、こんなにも無口でなくてもいいのでは?
原作で語られる人物の心の動きが、映像になったとき、演技だけでは伝わらない部分が多い気がしました。
ちょこっと出てきた、山本文緒先生、いい味出してました。