高峰秀子
幼い頃、見た映画「二十四の瞳」の大石先生を演じた高峰秀子の凛とした美しさに憧れたものであった。その後、読んだ自伝『わたしの渡世日記』(高峰秀子著、文春文庫、上・下巻)では、その歯切れのよい達意の文章に驚いた。ところが、私は高峰の極一部分しか知らなかったのだ。『高峰秀子の流儀』(斎藤明美著、新潮社)を繙いて、このことを思い知らされたのである。
高峰秀子の生き方の何がそんなに凄いのか。「天才子役」から「大女優」として55歳で引退するまでの50年間に300本を超える映画に主演し、人気を保ち続けたことが凄いのか。小学校に通算しても1カ月足らずしか通えなかったのに、見事な文章を紡ぎ出すことが凄いのか。十数年に亘り高峰と夫・松山善三に身近に接してきた著者が、敬愛する高峰の驚嘆すべき生き方を丸ごと、この本の中で開示している。
高峰秀子は「動じない」――著者の質問に「私は考えても仕方のないことは考えない。自分の中で握りつぶす」と答えている。だから、高峰は何事に対しても平常心でいられる。どんな局面においても冷静で適切な判断ができるのだ。「絶対に女優はイヤ。深い穴の底でじっとしていたい」というのが高峰の願いだというのだから、驚かされる。
「求めない」――今や、一歩も外に出ず、誰にも会わず、インタヴューや執筆の依頼も頑として受けず、三度の食事の支度以外はひたすらベッドで本を読む日々。これが85歳の高峰の現在の生活だという。華やかな映画界で長く過ごしながら、その魔力に幻惑されなかった。多くの女優が後生大事にする自分の業績に対して、いとも簡単に「興味ない」と答えている。高峰にとって重要なことは、映画賞をもらうことでも、目の色を変えて金を稼ぐことでも、日本映画史上に名を残すことでもなく、ただ、大切な夫と日々の暮らしを自分流に快適に過ごすことなのだ。
「期待しない」――著者は、「高峰はつくづくと不思議な人」と述べている。大女優なのに、虚栄、高慢、自己顕示、自惚れ、これら女優の「職業的必要悪」を全く持っていないからである。著者は、高峰が愚痴の類いを口にしたのを、ただの一度も聞いたことがないと言う。それは、高峰には端(はな)から愚痴の種になる「期待」そのものが存在しないからだ。
「迷わない」――迷わない人、決断力のある人は、自分の中に揺るぎない己の規範を持っている人だ。5歳の時から大人の中に交じって働いてきた、言わば「子供時代を奪われた」一人の少女が、その目で、じっと人間を見、物事の有様を見つめ続けながら、人にとって本当にすべきことは何か、してはならないことは何か、何が美しくて何が醜いのか、つぶさに見て、学び取った結果だ、と著者は考えている。
「変わらない」――高峰は、変わらない。決して翻意しない。前言を翻すこともない。不動の価値観を持っている。
結婚した時、高峰は大スターで、松山は1歳下の名もなく貧しい助監督であった。高峰のこの選択も素晴らしいが、その後、半世紀以上、今日まで、価値観を共有し、尊敬し合って仲良く暮らしてきたことがもっと素晴らしいと思う。
写真集『高峰秀子――高峰秀子自薦十三作/高峰秀子が語る自作解説』(原田雅昭編集・高峰秀子特別協力・斎藤明美監修、キネマ旬報社)では、各映画の高峰秀子の美しさをじっくりと堪能することができる。彼女自身が語る出演作の裏話も興味深い。
浮雲 (新潮文庫)
この作品が好きになれるかどうかは主人公の性格に共感できるか否か、暗い内容の割にはやたら軽くて明るい落語調に馴染めるかどうか、の二点に尽きると思う。主人公、文三は、叔父の縁故で上京し、彼の家族と共に生活をするようになる。そしてその下宿先に住む従妹のお伊勢に恋をするのだが、己の内気さや、愚かなまでに正直にこだわる性格が禍となって、会社はクビになり、好きな女には振り回され、暴言を吐かれた挙句、自分が忌み嫌っている男に彼女の心を奪われてしまう。この作品を一言で説明するなら、いつの時代にもよくいるさえない男の苦労話である。僕がこの作品において印象に残っている箇所は、作品の終わりに主人公が周囲の環境の変化とお伊勢の性格について冷静に独白する場面だ。彼の失職以来、彼にすっかり幻滅し、一刻も早く家から出てもらいたがっている叔母、そして彼につれなくするお伊勢がいるにもかかわらず、しぶとく家に残り続ける彼は、その理由を「人情」の一言に帰せしめている。それはどういうことかというと、彼に言わせると、彼が失職する以前は、春の日向のように幸せがあふれていたこの家の様子が、失職以来、彼の出現や叔母の損得ずくな振るまいによってこの家の様子がぎすぎすした汚らわしいものになってしまった、しかし、自分自身の性格すら把握できていない若い彼女までもこんな汚らわしい環境に染まらせるわけにはいかない、俺には彼女を救う義務があるのだ、と。始終一貫してお人よしの彼であるが、自らの境遇を省みていないところはやはりお目出度い人間と言わねばなるまい。あえて物語を完結させずに終わらせた作者は、この主人公をどう捉えているのだろうか。この作品が気に入った人は武者小路実篤の「お目出度き人」も一読あれ。
風雲児たち (1) (SPコミックス)
歴史大河ギャグ漫画とでも呼ぶべきか。
「幕末の英雄たちの活躍を描くために」その原因となった大本を辿っていくことからスタートしたら関ヶ原の戦いからになってしまった(笑)
「関ヶ原の戦い」以降の日本史の登場人物たちを全員ギャグキャラにしてコテコテのお笑いを連発させる手段が冴え渡る。
内容は深謀にして詳細。ハッキリ言って実在の人間の歴史的事実をここまで詳しく描けた書物を他に知らない。
特に他の歴史漫画ではまず扱わないであろう「田沼時代からペリー来航の直前まで」の詳しい描写には舌を巻くばかりだ。
全部のギャグの元ネタが判ったらスゴイが、判らなくても楽しめるのはもっとスゴイ。
日本史好きは必読と断言します。
キラーチューン
「ぜいたくは味方、もっとほしがります負けたって」
という、何とも戦時中なら、たちまち連行されそうな歌詞で、
おなじみの林檎の独特の発声によるボーカルが始まり、続いて
ベースとピアノがリズムを刻み出す。
非常に、ノリがよくて気に入りました。
あいかわらず、最高です。
おすすめです。
浮雲亭物語 二席 ~素直になれなくて2011――秋 ドーナツは揚げたてがおいしい篇~
浮雲亭雲蔵(前野智明)
浮雲亭小雲(下野紘)
浮雲亭雲月(桂平治)
おかみさん(有馬瑞香)
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のでそれを考慮して4にさせて頂きました。
そうではないのですがBLを匂わせるところが少しだけあります。苦手な方はそこを飛ばせば大丈夫だとは思いますが念の為最初に。
まず下野さん演じられる小雲がそりゃあもうかわいいです!!BL臭させられるところも、流れ的には「えー!ちょっと萎えちゃいそう…」とは思いつつも別物と思えば下野さんの演技がかわいすぎてかなり動悸が激しくなります(笑)
前野さんの落語はさすがの真打設定。すごかったです。世界が見えるし登場人物見えるし、終わる時の声の変わる瞬間などちょっと鳥肌たちました。
フリートークは前野さんも下野さんもかわいかったです。
下野さんのかわいい演技がお好きでBL大丈夫な方は買って損はないと思います。