人生、成り行き―談志一代記 (新潮文庫)
立川談志の生の高座は2回しか見ていません。
1回目見たときには感動し、2回目は不出来であっさり終わってしまい、拍子抜けしたぐらいでした。たった2回の”談志体験”で感じたのは、”この人(談志)は芸に関して、なんて、正直すぎるくらいの人なんだろう?”でした。
メディアでは、怖くて、不機嫌で、なるべくなら近づきたくないやくざのような人という印象でしたが、生談志はサービス精神一杯の高座で、見ていない人はなるべく見るように(現在は高座をセーブしておられるようですが)したほうがよいです。
本書はインタビューになっており、これまでの半生を振り返ってます。
本書でも感じるのは、芸に対する正直さがあふれており、落語家立川談志が過去のいろいろな出来事(選挙や三遊協会・立川流立ち上げ)を触媒にして、巨人になっていく様がよく分かります。立川談春「赤めだか」でも触れられているように、芸の出来る師匠(柳家小さん)ライバル・弟子に対する愛情があふれる人なんですね。その代わり、出来ないやつに対しての辛らつさは怖いぐらい。
PS・・・桂小金治に対して、落語界に残ってほしかった云々は、昔、桂小金治の講演を、期待しないで聞いたら、すごく面白かった思い出があるので、(小金治の)高座を見たくなりました。
志の輔らくごのごらく(3)「みどりの窓口」「しじみ売り」―「朝日名人会」ライヴシリーズ31
「みどりの窓口」は私が初めて観た志の輔師の作品であったが
あまりの完成度とレベルの高さに圧倒された。
私は当時かなりのお笑い好きで、かなりの笑いの作品を見て
目も肥え、そんじょそこらの演芸では笑わないくらいの
免疫がついてしまっていたが、志の輔師の「みどりの窓口」は
そんな私の想像をはるかに超えた素晴らしい出来栄えで、腹が痛くなるほど
笑わせられた。決してシュールでもなく、奇抜なギャグもないのに
これほど面白い作品はシナリオと演者の素晴らしさが一体となって
初めてできるものだと思う。
余談ではあるが、ある吉本のお笑い芸人(そこそこ名前の知れた人)がこの
「みどりの窓口」をカバーしてやっていたが、面白さは当然志の輔の足元にも及ばなかった。
他の芸人がやろうとするシナリオの凄さと演者としての凄さがこの作品で証明されている。
そして「しじみ売り」これはあの鶴瓶氏が本格的に落語を始める際に
「どうせ今の落語に大したのはおらへんやろ」と思っていて、
ある機会にこの志の輔師「しじみ売り」に出会い、衝撃を受けたという
エピソードを聞いたことがある。あの鶴瓶氏にさえ影響を及ぼす凄い演目。
そんな2席です。これはもう聴くしかない、と思います!
情熱大陸×立川談志 プレミアム・エディション [DVD]
立川談志は、一部の表面的な行為から、我侭だの身勝手だの、まるで人格破綻者のように言われることもあるが、彼は真面目な人だ。本当に人格破綻者なら、家庭なんぞ崩壊しているだろうし、素敵な家族に恵まれるはずはない。あの厳しさにもかかわらず、弟子の数も多いことも、彼の真面目さや優しさなしでは考えられないことだ。彼は狂気というが、彼は実は冷静で、狂気に憧れ演じていた部分もあったように思える。落語に情熱があって、一所懸命であり、健康な自己愛を持ち、粗野でも決して卑しくない人物だった。直接付き合うのは恐い人だけれど、少し距離をおいて、いつまでも応援していたい落語家だったと思う。