ヤン・シュヴァンクマイエル PREMIUM BOX [DVD]
ファイングラフはデジタル複製版画の一種(高級なプリント出力)なので、シュヴァンクマイエルの絵の相場より、安いのでしょう。
絵の質感はきれいにでていました。
余白におしゃれな押しピンをさし、プリントのまま部屋に飾っています。
お手軽に(DVDBOXと考えると高いですが)アートを楽しめ、エディション付きということで、展覧会の記念に持つのにはいいかと思います。
ですが、絵のコレクターのように絵に価値を見出し転売することを目的にする人にはおすすめできません。
純粋にシュヴァンクマイエルの絵が好きで、いつも見ていたい人向けです。
この素晴らしき世界 [DVD]
ナチ占領下、収容所から脱走してきた知り合いのユダヤ人青年を家にかくまうことになった夫婦の物語。家に出入りする夫の友人、ナチス信奉者のホルストなどから秘密を守らなければならない。必死になってあれこれと悪戦苦闘する姿は危機感と隣り合わせのユーモアが溢れていて、悲喜劇的。「ライフ・イズ・ビューティフル」と似た状況で、どっちも感動的だけれども、印象はかなり異なる。チェコという小国のお国柄がでているのかもしれない。可笑しくて悲しい。ラストシーン、赤ん坊を抱えた夫の表情はすごく印象的だった。
彼女に横恋慕するホルストの人物像もいい味を出していると思う。「やな奴」という第一印象を誰しもが抱くであろう序盤、そして途中からは誰しもがクズ野郎と思ってしまうだろうが、中盤あたりから、悲惨な状況の中で彼なりに必死の選択をして生きていることが明かにされてゆき、蔑みつつもどこか哀れみや微妙な共感が芽生えはじめてくる。そして終盤には・・・
「手を携えよ、さもなくば滅びん」
『トンネル』を見た時にも思ったのだけれども、最近、ナチスとか共産圏とか日本軍とか、いわゆる「敵側」の登場人物もこちら側の人物と同じように悩みや弱さ、痛みを持った一人の人間としてしっかりと描いているような映画がとくに欧州には多いなあと思いました。子供向け映画じゃないんだから本来は当然のことなんでしょうけどね。