ボックス21 (ランダムハウス講談社文庫 ル 1-2)
ページを繰る手ももどかしかった。終わりの百ページ、話がどこに行き着くのか、息詰まる時間が続いた。単に、読みながらの予想の当否が問題なのではなかった。その予想が、どの段階で明らかにされ、それがどのように登場人物たちに影響していくのか。そして、誰が、どのような決断をするのか、その重さを思った。
行き着いてみれば、不可避の結末であった、とも思う。が、それにしても……。
一人の娼婦の人生を秘めたコインロッカーが、主人公たちの生き方を翻弄する。各々の恥が暴かれ、現在のスウェーデンの社会を露わにする。
本書を含むシリーズは、スウェーデンでマルティン・ベックのそれに比されているという。確かにマルティン・ベックを思わせる部分がある。しかし、そこに描かれた人々の心の風景は変わった。マルティン・ベックに比して、より荒れている、すさんでいるのだ。スウェーデンだけではない。この日本の現在を見れば、ここ何十年かの間に人々の心がどれほど変わったかを改めて感じるだろう。
有能だが、仕事中毒にならざるを得なかった、仕事仲間との意思疎通さえ難しいエーヴェルト・グレーンス警部。そんな警部になぜか親しみを持つ、家庭を大切にするスヴェン・スンドクヴィスト警部補。野心満々のラーシュ・オーゲスタム検察官。その他、普段つきあうとしたら首を傾げざるを得ないような癖のある面々が、読み進むうちに親しみが持てるようになるのだから不思議である。
本書を読めば、スウェーデンでの薬物中毒、警察や刑務所を含む司法制度、隣国との関係、強制売春の実態等、多くの考えさせられる事実も知ることができる。だが考えざるを得ない部分も含めて、何より、本書は大人のための第一級の娯楽小説である。
9の扉 リレー短編集
辻村深月の取りが秀逸だが、それ以外はうーん。。。冒頭の北村薫もいまいちよく分からなかった。
もっと言えば、お題の理由がよく分からないところがいまいち全体が引き締まらない要因になったのではないでしょうか。
ジェニファーズ・ボディ (完全版) [DVD]
何も知らない状態で見たので、ジェニファーが特異体質なのか、エイリアンなのか等、引き込まれて推理したり
して面白かった。
不満な点としては、悪いロックバンドの連中に対する復讐を、ジェニファー本人がしない点だ。この部分を
ジェニファーが復讐するストーリーで、しっかり描いたほうが良いと思った。
ポーカーはやめられない ポーカー・ミステリ書下ろし傑作選 (ランダムハウス講談社文庫)
数年前からテキサスホールデムにはまってしまった私。で、「ポーカー」をテーマにしたアンソロジー、というのだから、読まないわけにはいきません。なるほど、序文に「ポーカーをテーマにしたアンソロジーがこれまでに一度も出版されたことがない」とあり、こういう本にいままで出会えなかったのも無理ありません。
1ページめから最後まで、あっというまに最後まで読み進んでしまいました。「ポーカー」というくくりのなかで、有名作家たちがそれぞれまったくちがう短篇を書き上げているのは見事。とくにおもしろかったのは、やはりジェフリー・ディーヴァーの「突風」。単なるミステリ短篇として読ませるのはもちろん、この作品では、ほかよりもさらに「ポーカー(テキサスホールデム)」が重要な小道具になっています。テレビ番組の収録、というバックグラウンドも入りやすいし、さすがディーヴァーって感じです。この作品については、テキサスホールデムの基本的なルールを知っていると、さらに楽しめます(知らなくてもOKな短篇も多数)。
ポーカーファンとしては、ディーヴァーの「突風」のようなポーカーが謎解きの要になるような作品がもう少しあれば、と思いましたが、反面、ポーカー初心者でも充分に楽しめる短篇も多いということかも。誰もが楽しめるアンソロジーだと思いました。